イチローズモルトはどんなウイスキー?人気の理由、種類、味、値段を徹底解説!

2020/11/15
ウイスキー

革新的なウイスキー造りをすすめるベンチャーウイスキーの「イチローズモルト」。

今回はそんなイチローズモルトのこだわり、人気の理由から、種類、味、値段をご紹介します。

イチローズモルトとは

イチローズモルト(Ichiro’s Malt)は秩父のベンチャーウイスキーが製造するウイスキーの銘柄です。

2005年販売開始にもかかわらず、世界的なお酒市場の中で、一躍スターダムに駆け上ったウイスキー。

代表されるカードシリーズ全54本のセットが、海外のオークションで1億円近い値がつけられたことはニュースでも大きく報道されました。

イチローズモルトという名前は、生みの親である肥土伊知郎氏からとったものです。

 

ベンチャーウイスキー

肥土伊知郎氏が創業した、ウイスキーの製造・販売を行う企業です。

本社は埼玉県秩父市にあります。

 

肥土伊知郎氏

肥土氏は東亜酒造という1625年から酒造業を営む家系に生まれました。

創業者である祖父から父へと経営が移り変わりますが、2000年に経営不振によって民事再生法の申請を行います。

そのようなか、翌年に肥土伊知郎氏が経営権を譲り受けたのです。

 

受け継いだウイスキー原酒を守り抜く

しかし、一度傾いた業績は上がる様子を見せずに2003年には他企業へと営業譲渡することが決定。

当時東亜酒造は羽生蒸留所で生産された大量のウイスキー原酒を抱えていました。

本来であれば廃棄する予定でしたが、新たな経営企業の方針に不信を抱いていた肥土氏は笹の川酒造に貯蔵の協力を依頼。

「貯蔵したウイスキーを処分するというのは、そのウイスキーが過ごした時間を無駄にすること」、そう言って当時の笹の川酒造の会長は協力を快諾しました。

やがて肥土伊知郎氏は新たな会社とともに独立を目指します。

 

2004年創業

その貯蔵されていたウイスキーの販売、及びウイスキーの製造を目的として、2004年「ベンチャーウイスキー」が設立されました。

「癖のある味」といわれていた羽生の原酒を「特徴のあるウイスキー」として熟成、ブレンド。

カードシリーズを始めとする数々のヒット商品を送り出していくことで、高い評価を受けるようになっていきました。

 

秩父蒸留所

その後、2008年に秩父蒸留所が稼働を始めます。

20011年に「秩父 ザ・ファースト」がリリースされると、国内外どちらでも即日で完売するほどの人気でした。

現在では、海外原酒もブレンドしたホワイトラベルや、国産原料であるミズナラ樽を使用したウイスキーなどで業界の最前線に立っていると言えるでしょう。

 

イチローズモルトの評価

イチローズモルトは比較的新しいブランドであるにもかかわらず、世界の主要大会で多くの受賞歴を誇ります。

 

まず、2006年にイギリスのウイスキーマガジン誌内の「驚きのジャパニーズウイスキー」において特集が組まれました。

そのなかででカードシリーズの「キング・オブ・ダイヤモンズ」が、プレミアムジャパニーズウイスキーの部門にてゴールドメダルの評価を受けました。

 

WWA

WWA(ワールド・ウイスキー・アワード)は、イギリスの専門誌が年に1度開催するウイスキーの国際コンテストです。

ウイスキーのみのコンテストとしては、世界最大規模になります。

ブレデッド、シングルモルトなど、16のカテゴリー別に審査されます。

 

2007年~2013年で、イチローズモルトのカードシリーズがジャパニーズ部門で7年連続の優秀賞を受賞しました。

2017年には、限定販売ボトルの「秩父ウイスキー祭2017」が、シングルカスクシングルモルトウイスキー部門で最優秀賞を獲得。

名実ともに世界一の評価を手にしました。

2018年、リミテッドエディションがブレンデッドウイスキー部門で最優秀賞、2019年にはリミテッドエディション2が同部門で最優秀賞を獲得します。

 

ISC

ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)は、イギリスの酒類専門誌が年に一度主催するブラインドテイスティングによる国際酒類コンテストです。

ウイスキー部門においては、世界中からエントリーされた500銘柄以上を、著名ブレンダーなどの専門家が審査します。

2014年と2015年、ホワイトラベルが2年連続で金賞を受賞しています。

 

イチローズモルトのこだわり

秩父蒸留所では、小規模生産だからこそできる、数々の実験的な取り組みが行われています。

 

原料へのこだわり

原料として使用される2条大麦麦芽は、主としてイングランドからの輸入品が使われていますが、一部は埼玉県で生産された麦芽を使用しています。

日本国内ほとんどのウイスキーに使用されている大麦麦芽は輸入に頼っているのが現状です。

しかし、秩父蒸留所はいずれ埼玉県産の原料のみでウイスキーを作ることを目標にしているそうです。

 

フロアモルティング

他にも、麦芽を発芽させる際、スコッチの伝統的な技法、フロアモルティングが取り入れられています。

フロアモルティングは、24時間体制、手作業で行うことから非常に重労働です。

フロアモルティングを行っているのは、本場スコットランドでも7ヶ所の蒸留所のみです。

現在ではコストや人件費の理由から、ドラム式や、タワー式のような機械的な製法が大半を占めています。

 

自社製造の樽を使用

蒸留所に自社の製樽所を所有。

主流となっているバーボン樽やシェリー樽以外にも、ミズナラ樽、ラムやテキーラなどのスピリッツ樽、ワイン樽など工夫を凝らした樽が作られています。

 

秩父蒸留所では伝統、革新のどちらかということにはこだわらず、手探りで最良のプロセスを見つけ出しています。

こういった製法、着眼点が世界に発信されていくウイスキーの原動力となっているのでしょう。

 

人気の理由

ウイスキー通へのアプローチ

肥土氏は自社のウイスキーの「個性的な味わい」をセールスポイントだとして、当初は国内のバーに販路を絞りました。

これは、コアなウイスキーファンを獲得し、口コミでブランドを広めるためです。

実際にバーにウイスキーを持ち込み、納得して頂いたうえで商品を販売する、という手法が功を奏しました。

 

カードシリーズが世界中から脚光を浴びる

ベンチャーウイスキー社がカードシリーズをリリースした当時、ウイスキーの投資価値は爆発的に上昇していました。

その背景と、ジャパニーズウイスキーへの関心の高まり、世界中で認識されているトランプをエチケットに採用するなど、複数の要因が重なり、世界的なコレクターにも注目されるアイテムへと育っていきます。

これにより、世界的にブランドが認知され、人気が爆発したのです。

 

イチローズモルトの種類

ここではそのシリーズについて説明していきます。

現在では販売しておらず、驚異的な価格が付けられているシリーズも数多くあります。

 

カードシリーズ

今では手に入れることはもちろん、お店で口にすることすら難しくなっているのがこちらのシリーズ。

すべてのボトルが54枚のトランプの名前を冠しています。

52種+ジョーカーが2種で1セットです。

先述した通り、海外のオークションでは1セット1億円で落札されたことが大きな話題になりました。

銘柄によりますが、発売当時の定価は7,000~10,000円です。

現在、楽天などのネットでは1本100万円以上で取引されています。

 

レギュラーシリーズ

レギュラーシリーズと表記はされていませんが、便宜的にこう呼ばせて頂きます。

基本的に秩父蒸留所で生産されたウイスキーの他、8程度の蒸留所の原酒とグレーン原酒を使ったブレンデッドウイスキーになります。

現行品はホワイトラベルのみの販売ですが、過去にはブラックラベルや、リミテッドエディションなども販売されていました。

 

リーフシリーズ

リーフシリーズという名前の通りエチケットが葉っぱの形をしたシリーズです。

ミズナラウッドリザーブ、ワインウッドリザーブ、ダブルディスティラリーズなどがあります。

以前は羽生蒸留所の原酒を使っていると表記していましたが、2018年以降にはその記載はなくなってしまいました。

 

秩父シリーズ

秩父蒸留所が稼働を始めたあとにリリースされたシリーズです。

秩父ザ・ファーストを始め、短めの熟成年数ながら、個性的な造りが癖になるシングルモルトウイスキーが作られています。

 

羽生蒸留所シリーズ

肥土伊知郎氏が東亜酒造から引き継いできた羽生蒸留所の原酒をボトリングしたシリーズです。

今では見かけることはほとんどなくなってしまいましたが、堅実で広がりのある味わいのボトルを多くリリースしていました。

 

ここからは、現在手に入るイチローズモルトの商品をご紹介します。

イチローズモルト ホワイトラベル

イチローズモルト ホワイトラベル

現在最も手に入りやすいイチローズモルトです。

秩父蒸留所を含め9蒸留所の原酒とグレーン原酒をブレンドしたブレンデッドウイスキーになります。

ホワイトラベルの味

色合いは優しいゴールド、フレッシュな柑橘の香りとオーク由来の甘さを感じられます。

余韻は軽やかで、溌剌な印象を受ける、飲み飽きないようなタイプのウイスキーです。

ホワイトラベルの定価

メーカー希望小売価格3,500円です。

ホワイトラベルの値段

ネットでの相場は、税込3,850~4,000円です。

 

イチローズモルト ダブルディスティラリーズ

イチローズモルト ダブルディスティラリーズ

羽生蒸留所のパンチョン主体のシェリー樽原酒と秩父蒸留所のミズナラ樽原酒をブレンドしたウイスキーです。

現在では羽生蒸留所の表記はなくなりましたが、親子で引き継いでいった情熱をこちらのウイスキーから感じることが出来ます。

ダブルディスティラリーズの味

始めにミズナラ樽由来のオリエンタルな香りを感じます。

口にすると力強いフルーツの香りとウッディな印象が折り重なり、しっかりとした余韻は感じますが、心地よい香りが残ります。

ダブルディスティラリーズの定価

メーカー希望小売価格は6,480円です。

ダブルディスティラリーズの値段

ネットでの相場は、税込14,000円~20,000円です。

 

イチローズモルト ミズナラウッドリザーブ

イチローズモルト ミズナラ ウッド リザーブ

熟成させる樽の原料に国産のミズナラを使用したブレンデッドモルトウイスキーです。

非公開ですが、秩父、羽生蒸留所以外で作られた原酒も使用されています。

ミズナラウッドリザーブの味

ミズナラ樽由来の白檀の香りが印象的です。カラメルやカカオマスのようなビターさと凝縮した果実味をほのかに感じます。

そのあとにしっかりとしたピートを感じられます。飲み応えはありますが、飲み飽きない味わいに仕上がったウイスキーです。

ミズナラウッドリザーブの定価

メーカー希望小売価格は6,480円です。

ミズナラウッドリザーブの値段

ネットでの相場は、税込15,000円前後です。

 

イチローズモルト ワインウッドリザーブ

イチローズモルト ワインウッド リザーブ

秩父蒸留所にて作られた原酒を赤ワインに使用された樽で熟成させたシングルモルトウイスキーです。

ワイン樽熟成による特徴的な色合いが出ています。

ワインウッドリザーブの味

最初は柑橘の香りです。

口に含むとビター感が相まって上質なオランジェットのような印象です。

ワイン樽由来の濃厚な黒い果実のニュアンスがしっかりと感じられて最後はウイスキー自体のスパイシーさも感じられます。

熟成年数は若めの印象を受けますが、個性と味わいのバランスが上手に取れたボトルです。

ワインウッドリザーブの定価

メーカー希望小売価格は6,480円です。

ワインウッドリザーブの値段

ネットでの相場は、税込13,000円~20,000円です。

 

イチローズモルト 秩父 オンザウェイ

イチローズモルト 秩父 オン・ザ・ウェイ

秩父蒸留所から定期的にリリースされているボトルです。

2011年、2015年、2019年でそれぞれ10年未満程度の原酒を使用しています。

「ON THE WAY=道の途中」という名前の通りそれぞれのリリースで異なる味わいで、発展途上にあるウイスキーとも言えるようです。

秩父オンザウェイの味

2019年リリースのボトルでは以前のリリース時より少し熟成感のある味わいです。

バーボン樽由来の優しいバニラの風味を感じられた後に優しいフルーツの香りとともにオークの骨格をしっかりと感じられます。

秩父オンザウェイの定価

メーカー希望小売価格は12,500円です。

秩父オンザウェイの値段

ネットでの相場は、税込45,000円~50,000円です。

 

イチローズモルト&グレーン プレミアム ブラックラベル

こちらは「ブラックラベル」と呼ばれているブレンデッドウイスキーです。

全10蒸留所のモルト原酒と3蒸留所のグレーン原酒をブレンドしています。

比較的長めの熟成がされた原酒を多く使用しており、飲みごたえのあるウイスキーです。

プレミアムの味

色合いは落ち着いた琥珀色です。

バニラやトフィーのような童心に浸れる甘い香りと熟感のあるフルーツの香りを併せ持っています。

オイリーで複雑な熟成感が楽しめるようなウイスキーになります。

プレミアムの定価

メーカー希望小売価格は5,500円です。

プレミアムの値段

ネットでの相場は、税込70,000~100,000円です。

 

さいごに

簡単ではありましたが、イチローズモルトについてお話をさせて頂きました。

今では悲しいことですが転売の対象にもなり、限定販売の際は長蛇の列ができ、当日にはオークションで出品されている、ということも目にする機会もありました。

せっかくの国産のウイスキーです。

驚くようなプレミア価格だけはなく、そこに至るまでの実直さ、熱意を味わいとともに楽しんでいただければと思います。

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