佐賀県を代表する日本一に輝いた日本酒「鍋島」。
今回の記事では入手困難な日本酒のひとつである鍋島について、おすすめの銘柄を日本酒ソムリエ有資格者が徹底解説。
鍋島が人気になった理由、入手方法についてもご紹介します。
鍋島とは?
鍋島は佐賀県・鹿島市にある富久千代酒造が醸す日本酒です。
富久千代酒造は大正末期に創業した老舗酒蔵。
鍋島はそんな富久千代酒造が1997年に生み出した新しいブランドです。
数々の日本酒品評会で入賞を果たしたことで、鍋島は全国にその名が知れ渡りました。
鍋島のそのフルーティーで透明感のある味わいは、多くの日本酒ファンから支持を受けています。
今では全国から問い合わせが来るほどの人気ぶりで、「幻の酒」と称されることも。
鍋島は品質を重視した少量生産を貫いていることから、入手困難な日本酒として知られています。
鍋島の特徴
【特徴1】フルーティーで淡麗な味わい
鍋島は華やかな香りと軽やかな飲み口が魅力。
メロンや洋ナシ、マスカットを思わせるような上品な香りが感じられます。
味わいはジューシーながらもすっきり辛口な仕上がり。
軽やかな口当たりの中にも米の旨味がはっきりと感じられ、満足感も備えています。
辛口な味わいですが、フルーティーな香りと米の優しい味わいを楽しめる点が、鍋島の魅力です。
【特徴2】日本酒品評会で多数の入賞実績
鍋島は多くの日本酒品評会で入賞の実績があります。
2002年に東京で開催された「国際酒祭り in Tokyo」で入賞したことを皮きりに、数々の品評会で入賞実績を増やしていきました。
全国新酒鑑評会では7年連続での金賞受賞を達成。
国際的なコンペティションであるインターナショナル・ワインチャレンジのSAKE部門では、2011年に最高金賞である「チャンピオン・サケ」を受賞します。
2000年代から破竹の勢いで受賞を続けた鍋島は、世界に認められた佐賀の酒として知られるようになったのです。
【特徴3】少量生産で希少価値が高い
鍋島は少量生産にこだわっている日本酒です。
富久千代酒造が生産する日本酒の量は年間で400石ほど。
1石は一升瓶100本分に相当します。
人気の酒蔵では1000石、大手の酒蔵であれば10万石ほどの生産量を持っていることも。
鍋島は人気が高まり出してから現在にかけて、開発当初から行っていた高品質少量生産の体制を変えていません。
需要が大きくなっても生産量は変わっていないため、鍋島は品薄の状態が続いているというのが現状です。
鍋島はどのように生まれた?
酒販売の規制緩和で苦境に立たされる
鍋島の製造元である富久千代酒造は、蔵の名を冠した「富久千代」や「泉錦」という銘柄を創業当初から製造していました。
富久千代酒造に転換期が訪れたのは1987年のこと。
酒類販売免許の規制緩和により、日本酒はスーパーマーケットなどの量販店でも気軽に購入できるようになりました。
巷では大手日本酒メーカーの安価な商品があふれ、地元の酒屋はこれによって苦境に立たされることに。
酒屋と取引をしていた酒蔵も大きな打撃を受け、廃業を余儀なくされる酒屋や酒蔵も少なくありませんでした。
小さな酒蔵であった富久千代酒造はこの状況に危機感を抱き、時代に合わせた新しい日本酒造りを決意します。
地元の酒販店と協力して新ブランドを立ち上げる
富久千代酒造は「佐賀を代表するような質の高い地酒」を目標に、新ブランドの開発に取り掛かりました。
新ブランドの開発のために富久千代酒造が行ったのは、信頼できる地元の若手酒屋との話し合いです。
「佐賀らしい日本酒とはなにか」について徹底的な議論を深め、地元の酒屋との協力体制のもと新ブランドの酒造りは進みました。
3年の歳月を経た1997年、ついに鍋島が完成します。
鍋島の名は一般公募で募集した案の中から命名されました。
江戸時代から約300年もの間佐賀を統治していた「鍋島家」が鍋島の由来です。
佐賀を代表する日本酒としての期待を背負い、鍋島はリリースされました。
日本酒品評会で次々に入賞を果たす
鍋島は誕生して以来、その優れた品質から多くの日本酒品評会で受賞を果たしていきます。
全国新酒鑑評会での金賞受賞や、インターナショナル・ワインチャレンジでの「チャンピオン・サケ」受賞。
2000年代に数多くの受賞を獲得した鍋島は、その名を全国に轟かせることになりました。
鍋島の人気は白熱していきましたが、富久千代酒造の日本酒造りは量産へと舵を切らず、あくまで品質にこだわり続けました。
信頼できる酒屋との取引を続けたことから、鍋島は次第に入手困難な日本酒となっていき、ますます注目度を高めることに。
現三代目蔵元の飯盛氏は、「『鍋島』は永遠に未完成」と語っています。
鍋島は今でも多くの日本酒品評会で入賞を続けており、これからもさらなる品質の向上を続けていくことでしょう。
鍋島を購入する方法
【方法1】特約店で購入する
鍋島は全国にある特約店で購入することができます。
特約店とは、メーカーから商品の販売許可を受けている店舗のこと。
富久千代酒造は信頼のおける酒屋としか取引をしていないので、鍋島の販売は特約店に限られているのです。
鍋島の特約店はホームページで確認することができますので、ぜひチェックしてみましょう。
鍋島の特約店一覧:http://nabeshima.biz/shop.html
【方法2】ネットショップで購入する
鍋島は生産量が少なく希少価値の高い日本酒です。
場合によっては、特約店でも品切れを起こしていることもあります。
また、お住まいの地域に鍋島の特約店が無いという方もいるでしょう。
そんな方には、ネットショップの利用がおすすめです。
ネットショップを使えば、場所を選ばずに鍋島を手に入れることができます。
ただ気をつけたいのが、価格と品質。
鍋島は希少銘柄のため、ネットショップでは定価の2~3倍程度で販売されていることも。
さらに、特約店以外の出品者もいることから、日本酒が適切な環境下で保存・配送されていない場合も考えられます。
ネットショップで購入する際は、価格と品質に十分注意して注文を行いたいところ。
品質に関しては、日本酒を冷蔵保存・冷蔵配送している業者を選ぶことがおすすめです。
鍋島のおすすめ銘柄10選
ここからは鍋島の中でもとくにおすすめの銘柄をランキング形式でご紹介。
日本酒品評会で入賞した銘柄や、鍋島ファンが好む人気の銘柄を中心にチョイスしました。
10位 鍋島 清酒 肥州
鍋島 清酒 肥州
酒米:山田錦
アルコール度数:15%
すっきりと辛口な味わいの1本。
鍋島唯一の普通酒で、飲み飽きのこないさっぱりした味わいが特徴です。
香りは穏やかですが、米の旨味が感じられ食中酒に最適。
濃い味付けの九州料理や魚介料理とよく合います。
9位 鍋島 特別純米酒 生原酒
鍋島 特別純米酒 生原酒
酒米:山田錦・さがの華
アルコール度数:17~18%
コクと旨味の溢れる生原酒タイプの特別純米酒。
生原酒ならではのパワフルな味わいが魅力です。
厚みのある味わいがありながらも、爽やかな風味が感じられます。
生酒タイプですが、常温で飲むことでより風味が引き立つのでおすすめです。
8位 鍋島 純米吟醸 隠し酒
鍋島 純米吟醸 隠し酒
酒米:山田錦
アルコール度数:16%
通称「裏鍋島」と呼ばれる純米酒。
日本酒を搾るときの最初と最後の部分である、「荒走り」と「せめ」をブレンドした1本です。
旨口な味わいがありながらも、透明感のある口当たりを楽しめます。
鍋島マニアなら押さえておきたい銘柄です。
7位 鍋島 特別本醸造
鍋島 特別本醸造
酒米:さがの華
アルコール度数:15%
さらりと切れ味の鋭い特別本醸造酒です。
軽快な口当たりがあり、するすると喉を通っていくなめらかさが魅力。
辛口なだけでなく、鍋島らしい爽やかな甘味も備えています
インターナショナル・ワインチャレンジの2017年本醸造部門で金賞の受賞実績。
6位 鍋島 純米大吟醸 山田錦 45%
鍋島 純米大吟醸 山田錦 45%
酒米:山田錦
アルコール度数:16%
高級感溢れる味わいの純米大吟醸酒。
兵庫県産特A地区の上質な山田錦45%まで精米。
華やかな香りと、すっと身体に染みわたる優しい甘味や旨味を堪能できます。
ゴールドに輝くラベルは贈答用としてもおすすめです。
5位 鍋島 純米吟醸 五百万石
鍋島 純米吟醸 五百万石
酒米:五百万石
アルコール度数:16%
すっきり華やかな純米吟醸酒。
五百万石らしい軽やかで、引っ掛かりのない味わいがあります。
甘味と酸味のバランスが秀逸で、爽快感は抜群。
食事が進むクリアな酒質が際立った鍋島です。
4位 鍋島 純米吟醸 赤磐雄町
鍋島 純米吟醸 赤磐雄町
酒米:赤磐雄町
アルコール度数:16%
旨味に磨きをかけた純米吟醸酒です。
旨味が特徴である雄町を使うことで、鍋島のジューシーさをより引き立てました。
骨太なコクを楽しめますが、後味の切れ味はしっかりとしています。
数多くの日本酒品評会で受賞実績を誇る人気の1本。
3位 鍋島 純米吟醸 山田錦
鍋島 純米吟醸 山田錦
酒米:山田錦
アルコール度数:15%
ジューシーな味わいの純米吟醸酒。
米の旨味を凝縮した味わいが特徴です。
豊かな果実の香りがあり、フレッシュでみずみずしい風味が溢れます。
インターナショナル・ワインチャレンジや全米日本酒鑑評会などで多数の受賞実績あり。
2位 鍋島 特別純米酒
鍋島 特別純米酒
酒米:山田錦・さがの華
アルコール度数:15%
鍋島の名前を全国レベルにした特別純米酒です。
酒米には山田錦と、地元の品種であるさがの華を使用。
上品な香りと心地よい旨味を感じる辛口な味わいを楽しめます。
インターナショナル・ワインチャレンジの純米酒部門で4度の受賞実績。
1位 鍋島 大吟醸
鍋島 大吟醸
酒米:山田錦
アルコール度数:17%
鍋島でもトップクラスの人気を誇る大吟醸です。
兵庫県産特A地区の山田錦を100%使用。
なめらかな口当たりと豊かで上品なフルーツの香りを感じます。
鍋島の中で最も受賞数の多い、一度は飲んでみたい銘柄です。
鍋島のおいしい飲み方
【飲み方1】冷やして飲む(冷酒で)
鍋島はフルーティーで淡麗な味わいが特徴です。
華やかな果実の香りを楽しむなら冷酒がおすすめ。
冷やすことで吟醸香がより華やかに感じられ、さらりとした辛口な味わいも楽しむことができます。
もちろん、好みによって常温や熱燗で楽しんでもいいでしょう。
ただし、フルーティーな香りは温度を高めすぎると揮発してしまうので注意が必要です。
【飲み方2】食事とのペアリング
鍋島にはいくつもの銘柄が存在します。
すっきりと香り高い吟醸タイプや、飲みごたえのある純米系など。
鍋島のバリエーションに合わせて、さまざまな料理との相性を楽しむことができます。
フルーティーな香りが楽しめるタイプの鍋島は、前菜などの軽い食事と合わせると良いでしょう。
サラダや酢の物、フルーツを使った軽めのメニューと合わせたいところ。
甘味や旨味のしっかりとした鍋島には、メイン系の食事が好相性です。
特にお肉料理には純米酒や原酒、にごり酒などコクのある鍋島が合います。
お刺身や焼き魚などシンプルな魚介系の料理には、すっきりと辛口タイプの鍋島がおすすめです。
鍋島をもっと楽しむなら「御宿 富久千代」に泊まろう!
鍋島の良さをもっと楽しみたいという方は、「御宿 富久千代」に行ってみましょう。
御宿 富久千代は、富久千代酒造が直営する2021年5月にオープンした酒蔵オーベルジュです。
オーベルジュとは、宿泊施設を併設したレストランのこと。
三ツ星付きのミシュラン店で修行した料理長が手がける、地元佐賀や九州の食材をふんだんに使った日本料理を楽しめます。
それぞれの料理との相性が考え抜かれた、鍋島とのペアリングはここでしか堪能できない貴重な体験。
食事以外、通常は非公開である富久千代酒造の酒蔵見学と鍋島の試飲を楽しむことができます。
古民家を改装した高級感ある宿や、醸造の町として栄えていた風情ある街並みなど、日本酒だけではない魅力も満載。
御宿 富久千代は1日1組限定の施設です。
鍋島の魅力を1日かけてたっぷりと体験できるので、気になる方はぜひ予約をして、訪れてみてください。
電話番号: 0954-60-4668
アクセス:JR肥前鹿島駅からタクシーで10分/JR肥前浜駅から徒歩6分
駐車場:有り
HP:https://fukuchiyo.com/auberge.html
まとめ
鍋島は数々の受賞実績を誇る佐賀で生まれた大人気日本酒です。
フルーティーな香りと、みずみずしくも辛口な味わいが鍋島の魅力。
鍋島は全国の特約店で購入するほか、ネットショップでも入手することができます。
鍋島のフルーティーさを楽しむには冷酒がおすすめです。
銘柄によって様々な食事とのペアリングを楽しむことができます。
鍋島の魅力を存分に楽しめる酒蔵オーベルジュもありますので、気になる方はぜひ訪れてみて下さい。
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