伊勢志摩サミットの乾杯酒として各国の首脳に振舞われた三重の日本酒「作(ざく)」。
今回の記事では人気の日本酒である「作」について日本酒ソムリエ有資格者が徹底解説。
作の人気の秘密や、各銘柄の特徴、おすすめの飲み方までご紹介します。
作とは?
作は三重県・鈴鹿市に蔵を構える清水清三郎商店が製造する日本酒です。
伊勢志摩サミットでの乾杯酒として選ばれたことから有名になり、一躍人気ブランドの仲間入りを果たします。
そんな作は、清水清三郎商店が廃業の危機に面した際の起死回生の銘柄として誕生。
作のクリアでフルーティーな味わいは瞬く間に人気を呼び、今では三重県を代表する日本酒ブランドとなりました。
作の名前は「日本酒の価値は作り手・売り手・飲み手のみんなで作る」という想いに由来しています。
その想いとは裏腹に、機動戦士ガンダムに登場する「ザク」と同じ名前であることから、アニメファンからも注目が集まることに。
このユニークな名前も作の魅力の一つと言えるでしょう。
作の特徴は?
【特徴1】フルーティーで軽やかな味わい
作はフルーティーでさらりとした口当たりが特徴。
「透明感」がひとつのテーマで、クリアでひっかかりの無い味わいがあります。
作にはいくつかの銘柄がありますが、そのどれもに共通しているのがこの透明感ある味わいです。
また、発酵によるリンゴやメロンを思わせるようなフルーティーな香りも。
軽口でフルーティーな香りがあることから、作を飲んで日本酒を好きになったという方も少なくありません。
食事との相性も良く、和洋中問わず様々な料理と合わせることができます。
【特徴2】伊勢志摩サミットの乾杯酒
作は2016年の「G7伊勢志摩サミット」の乾杯酒として選ばれました。
これが作の全国的な知名度を引き上げた大きな要因です。
世界の首脳陣からも作は高い評価を受け、これをメディアも大きく取り上げました。
作は一躍大人気の銘柄となり、全国からの問い合わせが殺到することになります。
その後も「SAKE COMPETITION 2017」で金賞、「KURA MASTER 2020」でプラチナ賞を獲得するなど躍進。
ますます注目度が高まった作は、入手困難な日本酒のひとつとして多くのファンから支持されています。
【特徴3】徹底した日本酒の品質管理
作は日本酒に対して徹底した品質管理を行っています。
その大きなこだわりの一つが、「生酒をつくらない」というもの。
生酒とは、日本酒に加熱殺菌を行わずに出荷をするフレッシュなタイプの日本酒です。
生酒は香り豊かでみずみずしい味わいが人気ですが、殺菌を行わないため商品劣化のリスクを孕んでいます。
清水清三郎商店はこの日本酒劣化のリスクを最小限にするためにも、消費者から人気のある生酒を作っていません。
しかし、作には生酒と間違えるほどフレッシュでみずみずしい風味があります。
品質と美味しさの両方にこだわる姿勢は、作が多くの人から支持を受ける理由の一つでしょう。
作はどのように生まれた?
減り続ける日本酒の消費量に焦りを感じる
作の製造元・清水清三郎商店のある鈴鹿は、伊勢神宮に関する書物の中で「味酒鈴鹿国」と称されています。
かつて鈴鹿は港にも近いことから地の利にも恵まれ、多くの酒蔵が軒を連ねていました。
しかし、今でも鈴鹿で酒造りを続けているのは清水清三郎商店のみ。
鈴鹿の酒蔵は、他の酒蔵からの委託醸造を受けて日本酒を製造する「桶売り」が主流でした。
時代の流れにより日本酒の消費量は減少を続け、桶売りの需要も減ったことで鈴鹿の酒蔵は次々と姿を消していったのです。
ついに鈴鹿唯一の酒蔵となった清水清三郎商店は、「このままではいけない」と一念発起し、蔵の存続を掛けた新ブランドの立ち上げを決意します。
新しい価値を作り出す日本酒を
清水清三郎商店の新ブランドとして、作が誕生する前に「鈴鹿川」という銘柄が誕生しました。
地元・鈴鹿の名を冠した銘柄は消費者に受け入れられると踏んでいましたが、その期待とは裏腹に鈴鹿川の評価はいまいちな結果に。
十四代が流行し始めていた1990年代後半は、フルーティーで味わい深い個性的な日本酒が好まれていました。
東京へ売り込みに出かけた際にある酒販店から「無濾過生原酒」が流行っていると情報を得ますが、酒造りを担当していた内山杜氏はこれに反対。
どんなに管理をしっかりしていても、意図せぬ劣化が起きるの生酒は絶対に避けたいとの想いがあり、社長もその考えに同意します。
自社のこだわりを貫きつつ、新しいチャレンジが必要だと気持ちを切り替え、再び新ブランドの日本酒造りに着手しました。
小型のステンレスタンクを導入し、1回の仕込み量を減らした小規模醸造にシフト。
徹底した品質管理ももと僅かな微調整を重ね、シンプルな中に感じる米の旨味を追求しました。
試行錯誤の末、「新しい日本酒の価値を作る酒」として2000年に作がデビューします。
伊勢志摩サミットを機に人気銘柄に
作の透明感があり、素朴な旨味のある味わいは、首都圏を中心にじわじわと評判が広がり始めました。
さらに、機動戦士ガンダムに登場する「ザク」と名前が同じということから、思わぬ形で作の存在が多くの人々に知られるように。
作の読みを「ざく」と名付けたのは、単に響きが良いからとの理由でした。
アニメファンから作が注目を集めたのは、まさに日本酒の新しい価値が作られた瞬間と言えるでしょう。
新ブランドとして人気の高まりを見せていた作は、2016年の伊勢志摩サミットの乾杯酒として選ばれることになります。
これにより作はさらに全国的な知名度を獲得し、今では日本酒の中でも指折りの人気を誇る銘柄と成長しました。
作を購入する方法
全国的に人気のある作を購入する方法についてこちらでご紹介します。
特約店で購入する
作は特約店で購入することができます。
特約店とは、メーカーから自社商品の販売を許可された店舗のこと。
特約店で作を購入するメリットは、定価で購入できる点と品質が保証されている点です。
特約店では、入手困難な日本酒も定価で販売されていることがほとんど。
また、蔵元から販売許可を貰っていることから、日本酒の管理方法や流通なども特約店では徹底されています。
作の特約店がどの店舗なのかは公表されていません。
製造元の清水清三郎商店に問い合わせれば、近くの特約店を教えてくれるので連絡してみましょう。
ネットショップで購入する
作はネットショップでも購入することが可能です。
ネットショップの利点は場所や時間の制限が無いところ。
近くに特約店が無い場合や、売り切れが続いているときはネットショップの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
その一方で、ネットショップで注意したいところが作の販売価格と品質です。
作は全国的に人気のある日本酒のため、ネットショップでは定価よりも高額で出品されている場合も。
さらに、作の特約店以外からも出品されていることもあるので、適切な管理がされずに劣化した商品が出回っていることもあります。
とはいえ、ネットショップは人気の日本酒を購入する方法として非常に便利なものです。
作の価格は現在落ち着いており、ネットショップでも定価と同等の価格で購入できるようになっています。
ネットショップを利用する際には、出品価格と出品者が日本酒をどのように管理しているのかに気を付けるようにしましょう。
作のおすすめ銘柄10選
作のおすすめ銘柄を日本酒ソムリエが10種類ピックアップしました。
定番銘柄と高級銘柄で分けたので、作の飲み比べもぜひ楽しんでみてください。
作の定番銘柄5選
作 玄乃智
作 玄乃智
爽やかな切れ味の純米酒です。
青りんごを思わせるようなほのかな香りがあります。
米の旨味や甘味がやわらかく、キリっとした酸味が後味を締めます。
冷やしても温めても美味しい、食事と合わせたくなる万能な味わい。
作 穂乃智
作 穂乃智
すっきりとした甘味が特徴の純米酒。
米のふくよかな旨味をストレートに感じることができます。
香りにはライチのようなみずみずしい果実香も。
冷酒からぬる燗までの温度帯がおすすめです。
作 恵乃智
作 恵乃智
ふくよかで華やかな純米吟醸酒です。
洋ナシのようなまったりとしたフルーツの香りを感じます。
甘味と酸味のバランスが絶妙で、いさぎの良いクリアな後味も魅力。
作を初めて飲むという方にぜひおすすめしたい秀逸な1本です。
作 奏乃智
作 奏乃智
シャープで旨味のある純米吟醸酒です。
精米歩合は50%と大吟醸クラス。
豊かな果実の香りと、繊細な切れ味を楽しめます。
爽やかさを味わうためにキリッと冷やして飲みたい1本です。
作 雅乃智
作 雅乃智
気品のある上質な味わいの純米吟醸酒。
香り高い酒と、味わい深い酒の2種類をブレンドしました。
バニラのような香りと、優しくも深みのある旨みを感じる仕上がりに。
作の魅力を世界に知らしめた人気銘柄です。
作の高級銘柄5選
作 インプレッションM
作 インプレッションM
しぼりたての酒を瓶詰めしたインプレッションシリーズ。
Mは恵乃智がベース。
栗を思わせる濃厚な甘味と、火入れ酒とは思えないフレッシュな香味を楽しめます。
インプレッションシリーズの中でも特に人気の1本です。
作 インプレッションN
作 インプレッションN
しぼりたての酒を瓶詰めしたインプレッションシリーズ。
Nは雅乃智 中取りがベース。
透明感のある飲み口と、非常に華やかな吟醸香が感じられます。
飲みやすさ抜群ですが、骨太な味わいも魅力です。
作 塊山一滴水
作 塊山一滴水
作のプレミアムシリーズのひとつ。
酒米には酒米の王と称される山田錦を100%使用。
低温発酵により、リッチな香りと長い余韻を生み出しました。
うっとりするような飲み口の純米大吟醸酒です。
作 陽山一滴水
作 陽山一滴水
作のプレミアムシリーズのひとつ。
山田錦を全量使用した大吟醸酒です。
凛とした鋭い口当たりがありますが、優しい後味と余韻が残ります。
柔らかな陽の光に照らされるような心地よい味わいです。
筰 クラウン 大吟醸
筰 クラウン 大吟醸
作シリーズの最高傑作とされる大吟醸酒。
酒造りの工程ひとつひとつにこだわり、一切の妥協を無くしました。
濃密で上品な果実の香りと、優美で伸びやかな味わいがいつまでも続きます。
一度は飲んでみたい最高峰クラスの作です。
作の美味しい飲み方
銘柄によって温度を変える
作はクリアで軽やかな味わいが特徴の日本酒です。
シリーズを通して透明感のある酒質が魅力ですが、銘柄によってその味わいは様々。
作の銘柄の多くは、冷酒でも燗酒でも美味しくいただけます。
その中でも特に、純米酒系の日本酒は熱燗がおすすめ。
玄乃智や穂乃智などは常温やぬる燗で飲むことで、米のふくよかな風味が引き立ちます。
一方で、シャープな味わいが特徴の銘柄は冷酒で飲むと良いでしょう。
奏乃智や雅乃智、その他高級銘柄は冷やして飲むことで、上品な飲み口と爽やかな香りを堪能できます。
ペアリングを楽しむ
作のクリアな味わいは、食事との相性が抜群。
和食から洋食、手軽なおつまみはもちろんフルコースの料理とも合わせることができます。
伊勢志摩サミットでは三重県産の食材をふんだんに使った和食のフルコースに合わせるお酒として、作が提供されました。
作はどんな食事とも合わせられる万能な味わいがありますが、せっかくなら地元・伊勢のグルメと合わせたいところ。
伊勢と言えば伊勢海老や牡蠣、ハマグリなどの海鮮のほか、日本三大和牛のひとつである松阪牛が有名です。
地元名物と地酒の組み合わせは鉄板ですので、ぜひ作と伊勢の名物のペアリングを楽しんでみてください。
まとめ
作は伊勢志摩サミットで要人たちに振る舞われた、三重県を代表する日本酒です。
火入れをせずとも、フレッシュで透明感のある味わいが作の魅力。
作は特約店で購入するほか、ネットショップでも手に入れることができます。
作にはさまざまな種類がありますので、銘柄に合わせて飲む温度を変えるのがおすすめ。
食中酒としても非常に優れているので、ぜひ伊勢の美味しいグルメと作を合わせてみてください。
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