シャトー・ラグランジュは、ボルドーの格付け3級に位置する名シャトー。
日本ではその素晴らしい品質に加え、サントリーが経営を立て直したシャトーとして有名です。
今回はシャトー・ラグランジュについて、歴史やこだわり、ラインナップをソムリエがご紹介します。
目次
シャトー・ラグランジュとは
シャトー・ラグランジュはボルドーのメドック地区・サンジュリアン村にあるシャトーです。
その歴史は古く、1600年代にはすでにワインを醸造していたことが古地図に残されています。
1855年のメドック格付けでグランクリュ3級に格付けされるなど、豊かで長い歴史を誇るシャトーです。
しかし、格付けから時は流れ、1900年代前半には戦争と恐慌の影響でシャトーは没落の一途をたどることに。
その後は1983年から日本のサントリーがシャトーのオーナーとなり、シャトー・ラグランジュは復調していきます。
サントリーは畑の改植や醸造設備の一新、ボルドー大学の博士を顧問に迎え入れるなど大規模な改修を行い、それがワインの品質向上に繋がりました。
シャトー・ラグランジュのワインは長期熟成に適した強いタンニンと酸味を持ちつつ、その味わいには上品な果実味や複雑な風味も感じられる点が魅力です。
日本のサントリーが立て直したフランスのシャトーとして、シャトー・ラグランジュは日本で有数の人気シャトーのひとつとして知られています。
>>【ソムリエ監修】ボルドーワインの特徴を徹底解説!産地の特徴、選び方、おすすめ銘柄もご紹介
シャトー・ラグランジュのこだわり
シャトー・ラグランジュの生み出すワインはどのような特徴があるのでしょうか。
こちらでシャトー・ラグランジュのこだわりについてご紹介します。
エレガントで素直な美味しさを目指す
シャトー・ラグランジュの魅力を表すキーワードが「エレガント」。
その味わいは豊富な果実味やタンニンが感じられつつも、非常に喉の通りが良くなめらかです。
程よい酸味も心地よく、中程度の余韻が長く続く感覚も気品ある印象を生み出しています。
香りはイチゴやラズベリーなどの赤いベリー系の果実が主体となっているのも特徴。
このチャーミングな風味がラグランジュのエレガントさを生み出しているとも言えます。
ただチャーミングなだけでなく、その中にもチョコレートやバニラ、なめし皮など複雑性を帯びている点も魅力です。
長期熟成に耐えうる銘柄もありますが、すぐに空けて飲んでも美味しい素直なワインをラグランジュは目指しています。
テロワールを最大限に生かす
シャトー・ラグランジュのワイン造りの哲学は「自然との共生」です。
「テロワール」の力を最大限に活かすための、自然との調和を求めるブドウ栽培に注力しています。
テロワールとは、ブドウ栽培の土壌や地形、気候など、ワイン醸造に影響を与える全ての自然の要素を含む大きな概念です。
シャトー・ラグランジュの畑の個性を活かすためにも、農薬や化学肥料の使用は最低限に抑えられています。
また、畑にあえて草を生やしたり、養蜂箱や鳥の巣箱を畑に設置したりと、畑に多様性を与える自然なブドウ栽培を行っています。
こうしたなるべく自然なブドウ栽培をすることで、シャトー・ラグランジュならではの気品ある親しみやすい味わいのワインが仕上がるのです。
区画ごとにブドウを徹底管理
自然に配慮したワイン造りにこだわるシャトー・ラグランジュ。
とはいえ、決してブドウ栽培を自然一辺倒に任せるのではなく、科学の力も活用するのがこのシャトーの優れているところです。
たとえば、収穫時には手作業の選別に加え、光センサーで未熟な実を取り除くよう徹底しています。
また、シャトー・ラグランジュの作付ブドウ面積は、サンジュリアン118ヘクタール、オー・メドック25ヘクタールの合計143ヘクタール。
これはメドック格付けシャトーのなかで最大規模です。
そんなシャトー・ラグランジュでは畑を100以上に区分し、ブドウの熟し具合に応じて収穫時期を細かく変えています。
広大なブドウ畑を細かく区分し、さらに熟度に合わせて収穫のタイミングを計るのは並大抵の労力ではこなすことができません。
こうしたきめ細かなワイン造りによって、「果実味があり、エレガントで、誰が飲んでも素直に美味しいと感じられるワイン」が出来上がるのです。
シャトー・ラグランジュの歴史
シャトー・ラグランジュが現在の地位を手にするまでには紆余曲折がありました。
こちらでシャトー・ラグランジュの復活の歴史をご紹介します。
経営難にあえぐシャトーをサントリーが買収
シャトー・ラグランジュは17世紀初頭、フランスのボルドー・メドック地区にて創業します。
シャトー名の「ラグランジュ」は独立した小さな集落を意味し、この名前は既に17世紀のワイン地図に記載されています。
19世紀に入ると、時の政権の内務大臣を務めたデュシャテル伯爵がシャトーの所有者となり、ボルドーでもトップを争う規模の醸造設備を設けました。
伯爵の経営下で生産量は大幅に増加し、畑の土壌に焼き物の土管を埋めて排水性を改善するなど、ワイン醸造の技術向上に大きく貢献。
そして、1855年のパリ万国博覧会の際に定められたボルドー・メドックの公式格付けにおいて、シャトー・ラグランジュは第3級に認定されました。
このようにしてシャトー・ラグランジュは順調に有名シャトーへの歩みを進めていきます。
これまで順調なワイン造りを進めていたシャトー・ラグランジュでしたが、彼らにも厳しい時代がありました。
1900年代に入ると、世界恐慌や第一次大戦の影響もあり、次第にシャトー・ラグランジュの経営が悪化していきます。
経営難によりブドウ畑畑は切り売りされ、ブドウの質も徐々に悪化。
シャトーを仕切るオーナーも次々と入れ替わるため、ワイン造りのポリシーがゆらぎ品質も安定しませんでした。
そして1983年、シャトー・ラグランジュに転機がおとずれます。
なんと、日本のサントリーがシャトー・ラグランジュを買収したのです。
欧米以外の企業がボルドーのワイナリー経営に進出するのは、歴史上初めてのことでした。
>>【ソムリエ監修】メドック地区のワインとは?産地の特徴、品種、格付け、有名銘柄を解説!
ボルドーの一流職人たちとの二人三脚
サントリーが新しいオーナーとなったことで、経営陣が一新されます。
顧問としてワイン造りのすべてに目を光らせる要職には、ボルドー大学の醸造研究所所長を務め、シャトー・マルゴーの再生請負人として名高いエミール・ペイノー博士を迎えました。
社長にはペイノー氏の門下生であるマルセル・デュカス氏、副会長には同じくペイリー氏門下であるサントリーの鈴田健二氏が就任。
資本注入と経営はサントリーが行うものの、ブドウとワイン造りについてはボルドーのベテラン職人が先頭に立つスタイルを採用しました。
この柔軟な協力体制をとることで、「よそもの」を嫌うボルドーの環境にもすんなり馴染むことができたのだといえます。
ブドウの木の植え替えから始まったシャトーの一大改革
シャトー・ラグランジュの改革は、朽ちはてたブドウの木を植え替えることからスタート。
もともとラグランジュの土壌は「メドックの上位10シャトーにも引けを取らない」とまで言われていました。
サントリーはシャトー・ラグランジュの畑が持つポテンシャルを信じ、根気強く畑の改革に取り組みます。
荒廃した畑の植え替えから20年を経て2000年代に入り、ようやくシャトーものにふさわしい「使える畑」へと再生を果たしました。
さらには醸造設備から城館、庭園に至るまで、膨大な時間とお金を投入してシャトーのすべてに手が加えられました。
復活から創造のステージへ
2005年に2代目副会長に就任した椎名敬一氏は、「これからのシャトー・ラグランジュは、復活から創造のステージに入る」と宣言しています。
シャトー・ラグランジュはすでに復活のシャトーとして一定の評価を受けていますが、完全復活まではまだ道半ばです。
日本企業の潤沢な資本、再生を果たしたブドウ畑と醸造設備、そしてボルドートップクラスの職人たち。
これらが三位一体となれば、グランクリュ3級に格付けされたかつての名声を完全に取り戻す日も、そう遠くはありません。
シャトー・ラグランジュの種類
シャトー・ラグランジュのラインナップは、赤ワインが3種類、白ワインが2種類です。
赤ワインは3段階のクラスにわかれています。
ファーストワインである「シャトー・ラグランジュ」、セカンドワインである「レ・フィエフ・ド・ラグランジュ」、サードワイン的位置付けの「ル・オーメドック・ド・ラグランジュ」です。
ただしヴィンテージ(生産年)については別です。ブドウがシャトーもののレベルを満たすようになった2002年以降から選ぶようにしましょう。
シャトー・ラグランジュのラインナップ
商品画像 | |||||
---|---|---|---|---|---|
商品名 | シャトー ラグランジュ | レ フィエフ ド ラグランジュ | レ ザルム ド ラグランジュ | ル オーメドック ド ラグランジュ | レ フルール デュ ラック |
詳細 | 果実 カベルネソーヴィニヨン | 原産国名 フラ | 度数 11 % 果実 ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、ミュスカデル | 度数 13 % ミディアムボディ 果実 カベルネ・ソーヴィニヨン70%、メルロ30% | 果実 ソーヴィニヨンブラン、ソーヴィニヨングリ、セミヨン |
商品リンク | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る |
シャトー・ラグランジュ
シャトー ラグランジュ
復活を遂げた名門シャトーを象徴する逸品
ファーストラベルである「シャトー ラグランジュ」です。
シャトー・マルゴーの再生と並び称されるラグランジュ再興。
その情熱がすべてこの一本に込められています。
値段もヴィンテージによってはセカンドラベルの倍以上しますがその価値は十分。
赤・黒・紫のベリーやスパイスの香り、余韻たっぷりに広がる果実味、そして長期熟成に耐えうるカベルネ・ソーヴィニヨンのしっかりとしたタンニンを堪能できます。
メドックの王道を行く格付けワインを手軽な値段で楽しみたい。そんな方にぜひおすすめしたい一本です。
産地 | ブドウ品種 | 味わい |
ボルドー/A.O.C.サンジュリアン | カベルネ・ソーヴィニヨン/メルロー/ プティ・ヴェルド | フルボディ |
香り | カシス、クローブ |
酸味 | ★★★★★ |
ボディ | ★★★★★ |
渋み | ★★★★★ |
レ・フィエフ・ド・ラグランジュ
レ フィエフ ド ラグランジュ
格付けシャトーの名に恥じないセカンドラベル
第2位はシャトーのセカンドワインである「レ フィエフ ド ラグランジュ」です。
1985年から始まったブドウの植え替えと土壌改良を経て、素晴らしいブドウを安定して収穫できるようになったラグランジュ
セカンドラベルとはいえ決して「ファーストの劣化版」ではありません。
ボディはファーストよりも気持ち軽くなりますが、熟成を待たずとも濃縮された果実味が楽しめる、しなやかさと深みを兼ね備えたワインです。
赤身のステーキや蒲焼きのようなこってりとした味付けの料理によく合うので、ぜひ試してみてください。
種類 | ブドウ品種 | 味わい |
ボルドー/A.O.C.サンジュリアン | カベルネ・ソーヴィニヨン/メルロー/ プティ・ヴェルド | フルボディ |
香り | ブラックチェリー、トースト |
酸味 | ★★★★★ |
ボディ | ★★★★★ |
渋み | ★★★★☆ |
ル オーメドック ド ラグランジュ
ル オーメドック ド ラグランジュ
ミディアムボディ
果実 カベルネ・ソーヴィニヨン70%、メルロ30%
新ブランドの象徴となるサードワイン
シャトー・ラグランジュが新たなブランドの開拓を求めて購入したオー・メドック地区の畑。
ここで収穫するブドウで醸造するのが「ル オーメドック ド ラグランジュ」です。
ランクとしては「レ フィエフ ド ラグランジュ」の下に位置しており、いわゆるサードワイン的ブランドといえます。
優れた果実味と、やわらかでエレガントな口当たりが特徴です。
ファースト、セカンドラベルとは違って、熟成を待つよりも新鮮なうちに飲み切ることで個性が活かされるワインだといえます。
種類 | ブドウ品種 | 味わい |
ボルドー/A.O.C.オー・メドック | カベルネ・ソーヴィニヨン/メルロー | ミディアムボディ |
香り | カシス、スミレ |
酸味 | ★★★★☆ |
ボディ | ★★★★☆ |
渋み | ★★★★☆ |
レ ザルム ド ラグランジュ
レ ザルム ド ラグランジュ
果実 ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、ミュスカデル
ボルドーらしい気品に満ちたラグランジュの白
ラグランジュが所有するサンジュリアンの畑118ヘクタールのうち、白ワイン用ブドウの作付面積はわずか4ヘクタール。
その厳選された少量のブドウから造られる白ワインのファーストラベルが、「レ ザルム ド ラグランジュ」です。
使用品種は、ソーヴィニヨン・ブランをメインに、セミヨン、ミュスカデルをブレンドしています。
「レ ザルム」とはシャトーの池に自生している白い花「オランダカイウ」のこと。
深みのある高貴な白い花のイメージにふさわしい、気品に満ちたワインです。
「ボルドーの白って飲んだことないけど、どんなワインなの?」そんな疑問を持っている方はぜひこの一本を試してみてはいかがでしょう。
種類 | ブドウ品種 | 味わい |
ボルドー/A.O.C.ボルドー | ソーヴィニヨン・ブラン/セミヨン/ ミュスカデル | 辛口 |
香り | メロンソーダ、砂糖漬けしたグレープフルーツ |
酸味 | ★★★★★ |
ボディ | ★★★☆☆ |
レ フルール デュ ラック
レ フルール デュ ラック
白い果実とヴァニラの香りをたたえる「湖の花」
湖の花という意味の「レ フルール デュ ラック」は、第3位で紹介する「レ ザルム ド ラグランジュ」のセカンドにあたるワイン。
主要品種であるソーヴィニヨン・ブランのフレッシュな酸味と新鮮な果実味が魅力です。
どっしりとしたボディとコク、そして蜂蜜のような甘みを持つセミヨンをブレンドすることで、爽やかなだけではない落ち着きのある辛口白ワインに仕上がっています。
値段も手頃なので、鍋などの庶民的な和食に合わせて楽しむのもいいですね。
種類 | ブドウ品種 | 味わい |
ボルドー/A.O.C.ボルドー | ソーヴィニヨン・ブラン | 辛口 |
香り | 白い花、ヴァニラ |
酸味 | ★★★★☆ |
ボディ | ★★★☆☆ |
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シャトー・ラグランジュに合わせる料理
最後にシャトー・ラグランジュと相性の良い料理をご紹介します。
最高のワインをより楽しむためにも、ぜひご参考ください。
牛サーロインステーキ
シャトー・ラグランジュとの組み合わせで外せないのが牛サーロインステーキ。
その濃厚でジューシーな味わいが、シャトー・ラグランジュのエレガントな風味と絶妙にマッチします。
中でも繊細な肉質と香りを持つ和牛がおすすめです。
上質な和牛をシンプルに塩で焼き上げ、シャトー・ラグランジュとぜひ合わせてみてください。
鴨肉のフルーツソース
鴨肉のフルーツソースもまた、シャトー・ラグランジュのワインと良く合います。
鴨肉と言えばブルゴーニュの赤ワインが鉄板ですが、エレガントな風味のシャトー・ラグランジュとの組み合わせも負けてはいません。
独特の脂の風味を持つ鴨肉と、フルーツソースの甘酸っぱさが絶妙にマッチし、ワインの果実の香りと複雑さを引き立てます。
特に、ダークチェリーやプラムなどのフルーツソースを使用すると、ワインのベリー系の風味と相まって、素晴らしいペアリングを体験できるでしょう。
うなぎの蒲焼
シャトーラグランジュは和食との親和性も高いです。
中でもおすすめなのが、甘辛いタレを絡めて炭火で香ばしく焼き上げたうなぎの蒲焼。
うなぎの蒲焼の濃厚な旨味とタレが、シャトーラグランジュのなめらかな渋味と複雑な風味を引き立てます。
醤油とみりんを使った風味は、果実味豊かな赤ワインと相性抜群ですよ。
チーズ【白カビ】
白カビチーズとシャトー・ラグランジュのワインは食後に楽しんで欲しいペアリングです。
チーズのクリーミーな口溶けと豊かな風味が、ワインの複雑さと果実味を絶妙な組み合わせを生み出してくれるでしょう。
特に、ブリーやカマンベールといった塩気が穏やかでクリーミーな食感のチーズがおすすめ。
ワインの渋味や甘味が、白カビチーズ持つ旨味やほのかな塩気を引き立ててくれます。
シャトー・ラグランジュはボルドー3級の実力派ワイン!
サントリーが経営に参画したことで見事復活を遂げたシャトー・ラグランジュ。
エレガントで飲みごたえのある味わいは、日本はもちとん世界中から非常に大きな評価を受けています。
すでにラグランジュはかつての品質を取り戻したように思われますが、畑の植え替えがスタートしてからはまだ30年ほど。
50年100年先まで愛されるワインとなるのか、真価が問われるのはまさにこれからです。
私たちもラグランジュのワインを飲み続けて、これから先の完全なる復活を遂げるまで末長く応援していきたいですね!
シャトー・ラグランジュのあるフランスのボルドーワインについて興味がある方は、以下の記事もぜひご覧ください
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