「メドックワインって何?」
「メドックワインの格付けとは?」
最高級の赤ワイン生産地として名高いフランス・ボルドー地方のメドック。
メドックは赤ワインで有名ということは知っていても、あまり詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、メドックワインの産地やその特徴、歴史などをソムリエが詳しく解説していきます。
また、メドックワインの格付けやテロワールなどについても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
この記事を読み終わる頃には、メドックワインについて詳しくなっていることでしょう。
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メドックワインの特徴
ブルゴーニュと並んで世界中を魅了する、ワインの名産地ボルドー。
そのボルドーの一画にあるメドックについて、その特徴をこちらで解説していきます。
芳醇で熟成された最高級赤ワイン
メドックのワインはワイン王国フランスの中でも高品質と言われており、「赤ワインと言えばメドック!」と言われるほど、世界中で人気があるワインです。
メドックの赤ワインは濃い目の赤色をしており、渋みに富んでいるのが特徴です。
また熟成された深みのある味わいの赤ワインであり、長期熟成に非常に適しています。
熟成させることで果実味が複雑になり、渋みが柔らかさを帯びるのでよりまろやかな味わいになります。
メドックワインのブドウ品種の特徴
単体のぶどうでワインを作るよりも複数のぶどうをブレンドして作ることが多いのが、メドックのワインの特徴でもあります。
メドックで使用される主なブドウ品種は以下の通りです。
・メルロー
・カベルネ・フラン
・プティ・ヴェルド
主体としてはカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローが使われています。
使用するぶどう品種の配合によって味わいが変化するため、様々な魅力を持つワインが生まれます。
ガツンと重い【カベルネ・ソーヴィニヨン】
黒ブドウ品種の王様とも呼ばれ、メドックで栽培されている主要品種です。
酸も渋みも強めで、しっかりと力強い重厚な味わいのワインに仕上がります。
オレンジ・カシスのようなフローラルなアロマと清涼感のあるミントのようなアロマがあり、旨味がギュッと濃縮された飲み応えのあるフルボディのワインに多く使用されます。
メドックでは複数のブドウ品種がブレンドされてワインが造られますが、カベルネ・ソーヴィニヨンはそのベースとなるブドウ品種です。
メドックの土壌はカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に適した環境のため、多くのシャトーでカベルネ・ソーヴィニヨンが栽培されています。
>>【ワイン教養】カベルネ・ソーヴィニヨンを解説!品種特徴や豆知識、おすすめ銘柄などご紹介!
柔らかくまろやか【メルロー】
力強くガツンとしたカベルネ・ソーヴィニヨンとは違い、芳醇でまろやかで繊細な味わいがあるのがメルローです。
色はやや朱色を帯びており、ブラックチェリーやプルーンのような熟した黒い果実の香りを感じます。
熟成することでコーヒーやチョコレート、なめし皮、タバコなどの香りが漂うワインが出来上がります。
カベルネ・ソーヴィニヨンよりも早熟な特性があり、メドックよりもボルドー右岸地域の方が栽培が盛んです。
>>【ソムリエ監修】メルローの人気おすすめワイン25選を紹介!特徴も解説
軽快でエレガント【カベルネ・フラン】
カベルネ・フランはカベルネ・ソーヴィニヨンなどから交配されたブドウ品種。
フランスのワイン産地では主にブレンドに使用されることが多いです。
その特徴は中程度のタンニンと爽やかな酸味、そして赤系ベリーやハーブ、スミレの花を思わせるような風味。
冷涼な環境下でもカベルネ・フランは栽培しやすく、カベルネ・ソーヴィニヨンよりも成長や完熟の速度が早い点も特徴です。
そのため、メドックでは主要品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンの収量や出来が良くない場合に、カベルネ・フランのブレンド比率を調整してワインのバランスを取っています。
ブレンド品種として知られるカベルネ・フランですが、カベルネ・フラン100%のワインは熟成によりカシスなどの果実味や土、タバコなどの熟成香を生み出す素晴らしいワインとなります。
>>【ソムリエ監修】カベルネ・フランとは?品種特徴、おすすめ15銘柄も価格別にご紹介!
スパイシーな風味を与える【プティ・ヴェルド】
プティ・ヴェルドもボルドーではブレンド品種として使われることが多いです。
その名の由来はフランス語で小さいを意味する「プティ」と、緑を意味する「ヴェルド」の組み合わせからになります。
プティ・ヴェルドの特徴は、黒系ベリーやスパイス、チョコレートを思わせる香りと、濃厚な果汁の色合いです。
メドックでは主にカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたワインに、数パーセントの割合でプティ・ヴェルドがブレンドされます。
3~5%の割合でブレンドされることが多いですが、わずかな量でもワインに深みと複雑さを加えます。
メドックワインの格付けとは
ワインの格付けとは?
ワインの格付けとは何か知っていますか?
簡単に言うと、シャトー(ワインの醸造所)にランク(格付け)をつけたものです。公式につけられているため、品質の良いワインを見極める指標になります。
フランスには各ワイン生産地域にいくつかの格付け制度が存在します。
とりわけボルドー地方には格付け制度が多く、さらに中でも最も歴史が古く世界的に有名な格付けが「メドックの格付け」です。
メドックの格付けの歴史
フランスボルドー地方・メドック地区の格付けは1855年に制定。
同年のパリ万国博覧会に出品するボルドーワインを決めるため、時の権力者であるナポレオン3世の命により格付けが行われたと言われています。
限られた時間の中で格付けの依頼を受けたボルドー商工会議所は、その時に担当していたメドック地区のシャトーを格付けの対象としました。
当時の流通価格をベースに格付けを決定し、第1級〜第5級の5階層に格付けが公表されました。
格付は1855年の制定から例外を除いて変更されることはなく、150年以上変わらない品質をメドックのワインは維持しています。
メドックの格付けの仕方
現在メドック地区の61のシャトーが第1級〜5級に格付けされています。
格付けの内訳は以下の通りです。
第1級格付け(合計5シャトー)
第2級格付け(合計14シャトー)
第3級格付け(合計14シャトー)
第4級格付け(合計10シャトー)
第5級格付け(合計18シャトー)
数字が低いほど高品質のワインを作ることができると認められており、最も格付けの高い第1級のシャトーは通称「5大シャトー」と呼ばれます。
5大シャトーはワイン業界でもトップクラスの知名度を誇り、世界中で高値で取り引きされる大変人気のあるワインを生み出しています。
>>【ソムリエ執筆】五大シャトーとは?値段から当たり年まで徹底解説
メドックのワインの産地について
メドックはどこにある?
メドックはフランスのボルドー市街地の北に位置します。
比較的温暖な海洋性気候で、砂利が多く水はけの良い土壌は主体ぶどう種であるカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に最適です。
実はメドックと言っても2つあります。メドック地区サンテステフ村から上流域(南側)をオー・メドック、それより下流域をメドック(旧バ・メドック)と言います。
高品質ワインと言われメドックの名を名乗ることができるのはオー・メドックの方のワインです。
しかし旧バ・メドックのワインも品質が悪いというわけではなく、オー・メドックに負けないくらいの品質のワインを生み出しています。
オー・メドックのワインに隠れてはいますが、旧バ・メドックのワインも味わってみるのもおすすめです。
メドックのテロワール
メドックが世界有数のワイン産地といえる理由は、そのテロワールにあります。
テロワールとはフランス語で「土地」を意味し、ワイン業界においては特定の地域の気候、土壌、地形、そして文化によって形成されるワインの風味や性質を表す言葉です。
メドック地区はジロンド川の左岸に位置し、地元の気候は海洋性で暑すぎず寒すぎず、そして比較的高い降水量が特徴。
これによりブドウはゆっくりと成熟することができ、風味と酸度を適切に保つことができます。
地形的にはメドックは主に砂利の丘からなる地形で、この砂利質の土壌はワイン造りにとって非常に重要な役割を果たします。
砂利は昼間に太陽の熱を蓄え、夜間にそれをゆっくりと放出するため、ブドウが夜間も適度な温度で成熟を続けることができます。
メドック地区でカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培が盛んなのは、この熱を保持できる土壌が晩熟型のカベルネ・ソーヴィニヨンにとって適した条件であるためです。
また、砂利質の土壌は水はけが良いため、ブドウの根が深くまで伸び、必要な栄養素を吸収するのに適しています。
ブドウが根を深く伸ばすことで、地中に眠る豊富なミネラル分をブドウが蓄え、それがワインにも複雑性や奥行きを与えるのです。
メドックではなぜ長期熟成型の良質な赤ワインが生み出されているのか。
それはメドックの持ついくつかのテロワールの要素が組み合わさった結果と言えるでしょう。
メドックの当たり年
ワインの世界には「当たり年」というキーワードがあります。
ワインは生鮮食品であるブドウを原料としているため、ワインの出来はブドウの出来に大きく左右されるのが特徴です。
ブドウの出来栄えは天候によって左右されるために、天候の恵まれた年のブドウを使って仕込まれたワインのことを「当たり年」と呼ぶのです。
こちらでメドック地区の当たり年と呼ばれている年代をご紹介します。(メドック地区を含むボルドー地方全体の当たり年のご紹介となります。)
・1961
・1982
・1983
・1986
・1989
・1990
・1995
・2000
・2005
・2009
・2010
・2015
・2016
メドックの産地ごとの特徴
メドックは北からいくつかの産地が分散しています。
・ポイヤック村
・サン・ジュリアン村
・ムーリス村
・リストラック・メドック村
・マルゴー村
産地ごとに土壌が異なるため、造られるワインは産地ごとの個性があります。
柔らかい酸としっかりした渋みのワイン【サンテステフ村】
柔らかい酸としっかりした渋みのワイン サンテステフ村。
サンテステフ村はフランスのボルドーワインの中でも特に名高い地域の一つです。
サンテステフのテロワールは、一般的に石が混ざった砂利質の土壌で、その下には粘土層が存在します。
これは特にカベルネ・ソーヴィニヨンが良く育つ環境の典型です。
特徴は柔らかい酸と、タンニンの多いしっかりとした渋み。
一般的なメドックのワインよりも強い色調があります。
サンテステフのワインはその強力な構造と深みのある味わいから、しっかりとしたタンニンと長期熟成のポテンシャルを持つことで知られています。
5大シャトーが集中している【ポイヤック村】
ポイヤック村はメドックでも有数の銘醸地として人気です。
ポイヤックの土壌は多くの石と砂利を含んでおり、日中に石が吸収した熱を夜に放出し、ブドウの完熟を助けます。
ポイヤック村のワインは一般的にパワフルで、その味わいにはブラックベリーやプラム、スパイスやタバコの風味が含まれ、非常に高い熟成のポテンシャルを持ちます。
5大シャトーのうちラフィット、ムートン、ラトゥールの3シャトーが集中しており、高品質なワインを多く出している産地です。
気品のある優雅なワイン【サン・ジュリアン村】
サン・ジュリアン村は、2つの異なる土壌を持った産地です。
北側は粘土質の土壌のためふくよかで厚みのあるワインが生産されます。
一方で、南側はメドックの特徴である砂利質の土壌です。
サン・ジュリアンのワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンの力強さとメルローの丸みを兼ね備えています。
他のメドックの産地よりも飲み頃を迎えるのが早く、比較的リーズナブルなお値段で楽しむことができるでしょう。
濃厚な長期熟成ワイン【ムーリス村】
ムーリス村は知る人ぞ知るメドックの隠れた産地。
格付けシャトーがないためメドック地区の中での認知度は低いですが、年々ワインの完成度が高まっており注目を集めています。
そんなムーリス村で生産されるワインは力強い果実味と、渋味のしっかりとした濃厚さが特徴。
コスパに優れたメドックワインを飲むのならぜひ今のうちに。
早熟タイプのワインが多い【リストラック・メドック】
リストラック・メドックはメドック地区の北部に位置し、やや涼しい気候が特徴。
そのため、カベルネ・ソーヴィニヨンよりもメルローの栽培に適しています。
ムーリス村とほぼ同じ地形・土壌、使用するぶどう品種や栽培方法も似ています。
しかし、ムーリスと比べるとメルローの比率が高く、早熟タイプのワインが多いです。
リストラック・メドックのワインは丸みがありフルーティーで、長期熟成せずとも美味しいワインに仕上がります。
華やかで女性的なワイン【マルゴー村】
マルゴー村はメドック地区において「女性的」と表現される産地です。
格付け1級のシャトー・マルゴーがあることで、マルゴー村の知名度は高くなっています。
マルゴー村の大きな特徴は様々なタイプの土壌が入り混じっていること。
砂利や砂、粘土、石灰などがあるほか、砂利だけでも白や黄色、灰色など多様性に富んだ土壌を有しています。
これら複数の土壌で栽培されるカベルネ・ソービニヨンやメルローをブレンドすることで、気品ある香りや繊細な酸味が織りなす複雑性を生み出すのです。
よりエレガントなメドックワインを飲みたい方はマルゴー村をおすすめします。
メドックワインの歴史
メドック地区で本格的にワイン造りが始まったのは16~17世紀頃からと考えられています。
オランダ商人との交流が進む中、砂利だらけの湿地帯であったメドックに灌漑技術が伝わり、作物を育てることのできる環境整備が進みました。
これらの開発によりメドック地区はワイン生産に適した土地となります。
18世紀に入るとフランスは国外との貿易が盛んになり、ボルドー市は港湾都市として栄えることになりました。
この時にボルドー市に拠点を置いていた貴族たちは、せわしないボルドー市の街中から逃れるように郊外に邸宅(シャトー)を立て、そこでワイン造りを始めるようになります。
貴族が生産する高品質なワインがメドックを中心に徐々に生まれはじめ、さらにそのワインはイギリスで大流行してワインの輸出ビジネスが発展。
それから時は経ち、1789年のフランス革命によってシャトーは一時政府に没収されますが、後にシャトーは競売にかけられ貴族や銀行家など資本家の手にわたることになります。
19世紀に入るとパリとボルドーを結ぶ鉄道が開通し、ボルドーのワインはパリという大きな市場を獲得することに。
さらに1855年のパリ万博でお披露目となった「メドックの格付け」により、メドックのワインは世界からも大きな注目を集めることとなりました。
ワインを輸出しやすくなったメドックでは、ワインの品質向上のためにブドウ栽培やワイン醸造技術の改革、設備投資がより一層進むことになります。
このように、メドックの歴史はビジネスと共に発展してきた側面が大きな特徴です。
メドックの有名なワイン銘柄
- ・高い
- ・飲み切るのが大変
- ・他と比較できない
という悩みがありますよね。
ホームワインは高級ワインが100mlで4本ずつ届くから、ワインの違いをわかりたい方にオススメ。本サイトの編集長ソムリエ佐々木が監修した学習コンテンツや、2023年にスタートしたソムリエによるコンシェルジュサービスも大人気。
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※販売数には限りがございますので、売り切れの際は何卒ご容赦ください。
次の1杯がすぐ飲みたくなる!『ル・オーメドック・ド・ジスクール』
マルゴー第3級格付けのシャトー『ジスクール』の精鋭スタッフが作る別蔵赤ワインです。
『神の雫』でも「次の1杯をすぐ飲みたくなる素敵なワイン」と紹介されているため、ワイン好きな方なら知っている方もいるのでは?
ジスクールの華やかな味わいはそのままですが、価格はジスクールの半分以下!コストパフォーマンスが高くおすすめの1本です。
辛口フルボディの赤ワインで、たっぷりの果実味があり、熟成香と繊細な味わいが特徴。
かすかなスパイシーさもあり、甘いベリー系の香りとオレンジの皮やカラメルがほどよく共存して複雑な香りがします。
味わい | フルボディ |
ブドウ品種 | カベルネ・ソーヴィニヨン50%、メルロー50% |
産地 | マルゴー村 |
香り | ブラックチェリー、クローブ |
酸味 | ★★★★☆ |
ボディ | ★★★★★ |
渋み | ★★★★★ |
凝縮された果実味と酸味の『レ・ザルム・ド・ラグランジュ』
サンジュリアン村の第3級格付けのシャトー『ラグランジュ』が作る白ワイン。
味わいが強い辛口ワインは時に赤ワイン以上の高い評価を受けることもあります。
この『レ・ザルム・ド・ラグランジュ』は品種特有のハーブや柑橘系のさわやかな香りが特徴的な、辛口白ワインです。
口に入れた瞬間、果実の風味としっかりとした酸味が広がります。
辛口の濃い味が好きな方にはぜひ飲んでいただきたい1本です!
味わい | 辛口 |
ブドウ品種 | ソーヴィニヨン・ブラン60%、ソーヴィニヨン・グリ20%、セミヨン20% |
産地 | サンジュリアン村 |
香り | グレープフルーツ、白い花 |
酸味 | ★★★★★ |
ボディ | ★★★☆☆ |
メドックはフランス最高品質のワインが集中した産地!
一口にメドックのワインといっても産地などによって様々な特徴がありますが、熟成された酸も渋みも強い味わいというのがメドックワイン共通の特徴です。
重くがっしりとしたフルボディが好きな方にはたまらないワインとなっています。
150年以上品質を保っている最高級のメドックワインをぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
ボルドーのワインに興味のある方はぜひ以下の記事もご覧ください
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