貴腐ワインが好きな方でしたら、一度は「シャトー・ディケム」という名を聞いた事があるのでは?
シャトー・ディケムの造る貴腐ワインは、世界最高のワインと称される極上の逸品です。
最良のブドウと究極のこだわりをもって造られる至高の味わいは、世界中から高い賞賛を受けています。
この記事では、そんなシャトー・ディケムについて詳しく解説します。
人気の理由から、当たり年、あまり知られていないシャトー・ディケムの白ワインまで紹介します!
目次
シャトー・ディケムとは
フランス、ボルドー地方のソーテルヌ地区を拠点とするシャトー・ディケム(Château d’Yquem)は、有名な貴腐ワインの造り手です。
そもそも貴腐ワインとは、白ブドウの果皮がボトリティス・シネレアという貴腐菌に感染し、より芳醇な香りや高い糖度になることを利用したワインです。
そしてシャトー・ディケムは貴腐ワインの中でも非常に甘く、美しい色合いや芳醇な香りであるワインとなっています。
実際にロバート・パーカーをはじめとするワイン評論家の評価はすべて満点です。
各ヴィンテージにも、それぞれに高評価が付けられており、その分高値で売買されています。
シャトーディケムの歴史
シャトー・ディケムの歴史は中世にさかのぼります。
シャトー・ディケムはもともとイギリス領で、イギリスの国王が所有していました。
後に、フランス領となり、1593年に貴族のソヴァージュ家が所有することになります。
その後、ソヴァージュ家とリュル・サリュース家の結婚により、リュル・サリュース家がシャトー・ディケムを引き継ぎます。
ソーテルヌ最高の格付けシャトーに
1855年、シャトー・ディケムはボルドー、ソーテルヌ地区の格付けで「プルミエ・クリュ・シュペリュール(特別第一級)」の称号を獲得しました。
この格付けはソーテルヌ地区における頂点で、シャトー・ディケムにのみ与えられています。
以降格付けに変更はありません。
LVMHの傘下に
1999年にシャトー・ディケムはLVMHグループに買収されました。
LVMHグループは、ルイ・ヴィトンをはじめとするファッションブランドや、モエ・エ・シャンドンなどのシャンパーニュメゾンを傘下におさめる巨大コンツェルンです。
ワイン造りのこだわり
ここではシャトーディケムが最高とされる所以について、ご紹介します。
厳しいブドウ選定
シャトーディケムは113ヘクタールもの広大な畑を所有し、恵まれた気候と土壌のもとでブドウを栽培しています。
そのワイン造りでは、完熟したブドウのみを使用。優良なブドウを収穫するために、8週間近くかけて丁寧に選別しながら手摘みされています。
厳正に選別されるため、1本の樹からグラス一杯分のブドウしか収穫できないと言われているほどです。
熟成は3年以上
熟成はフレンチオーク材の新樽のみを使い、3年以上行われます。
この段階で、シャトー・ディケムにふさわしくない品質と判断された場合はリリースされることはありません。
このように厳格に造られたワインは長期熟成のポテンシャルが非常に高く、収穫後100年も飲み頃が続くものもあるとされるほどです。
シャトー・ディケムの評価
イギリスにヒュー・ジョンソン氏というワイン評論家がいます。
ロバート・パーカー氏と並んでワインビジネス界で有名であり、彼のコメントひとつでワインの価格が変わるほど影響力のある人物です。
ヒュー・ジョンソン氏のワインガイド「Hugh Johnson’s Pocket Wine Book 2019」では、シャトー・ディケムは最高評価の4つ星が付けられています。
そして以下のようにコメントされています。
「甘口ワインの王様。力強く、凝縮感があり、甘美な味わい。3年の樽熟成がされる。ほとんどのヴィンテージは15年以上かけて味わいがさらに良くなり、なかには100年以上たっても飲み頃が続くヴィンテージもある。」
シャトー・ディケムの味わい
シャトーディケムの貴腐ワインは輝く黄金色で、ハチミツやアプリコットなどの芳醇な香り、濃厚な甘みを楽しむことができます。
単に甘いだけではなく、酸味やミネラル感にも溢れ、奥深い風味を与えています。
シャトーディケムは貴腐化させたブドウを使っており、貴腐化によって白ブドウは高い糖度や芳醇な香りをまといます。
その結果シャトーディケムは、非常に甘くとろけるような味わいや香りになるのです。
また甘みと酸味、ミネラルの風味が素晴らしいバランスを取り、この上なく高貴な口あたりも魅力的です。
間違いなく貴腐ワインの中でトップクラスの香りと味わいと言えます。
シャトーディケムに使われている品種
シャトーディケムの貴腐ワインには、セミヨン80%、ソーヴィニヨン20%がブレンドされています。
バランスのとれたフレッシュさが魅力の「セミヨン」
主にフランスのソーテルヌ地区、グラーヴ地区で栽培されている品種です。
果皮が薄く貴腐菌が付きやすいことから、貴腐ワインのメイン品種になっています。
若いうちはあまり特徴のない味わいながら、長期熟成能力が高いのが特徴。10年以上の熟成で、コクのある奥行きの深い味わいのワインに仕上がります。
酸味が弱いことから、ソーヴィニヨン・ブランをブレンドすることが一般的。フレッシュな酸味が加わることで、味わいにバランスが取られています。
柑橘系の爽やかさが魅力の「ソーヴィニヨン・ブラン」
フランスのボルドー地方、ロワール地方を中心に、世界中で広く栽培されている品種です。
生き生きとした酸味と、豊かな果実味が特徴。繊細で上品な味わいのワインに仕上がります。貴腐ワインではセミヨンに2割ほどブレンドすることで、柑橘系の爽やかな香りと酸味を与えています。
シャトー・ディケムの価格相場
貴腐ワインのヴィンテージは、年度によって価格が異なります。
・375ml(ハーフボトル)では、30,000円~40,000円が相場です。
<ネットの最安値と最高値>
最安値は、30,000円後半で購入できます。
最高値は、ヴィンテージ1976年のもので、200,000円ほどです。
買取額の相場は?
シャトーディケムのヴィンテージは貴腐ワインの最高峰として価値が高く、店舗では手に入らない希少品も多いのが実情。
そのため、買取も高額で取引されています。
もしお手元に古いヴィンテージがあるなら、高く買い取ってもらえるかもしれません。
買取相場の一例は次の通りです(すべて750ml)
- 1990年:40,000円前後
- 1994年:35,000円前後
- 1996年:20,000円前後
- 1998年:32,000円前後
- 2001年:50,000円前後
- 2009年:42,000円前後
おすすめの当たり年
おすすめの当たり年は1986年、1989年、1990年、1998年、1999年、2001年、2005年、2008年です。
特に秀逸なのが1990年、2001年です。
2005年、2008年は高値が付いていますがまだ飲み頃ではなく、あと10年は待つ必要があります。将来楽しむために購入するのにはいいでしょう。
今回は特におすすめの1990年と2001年、1998年のシャトー・ディケムを紹介します。
1990は強い甘みとミネラルが豊富
1990 シャトー ディケム
1988年、1989年、1990年のヴィンテージは糖度が高い三部作とされ、その中でもパーカーポイント99点と高評価なのが1990年です。
ハチミツやミネラル感溢れる強い香りが魅力的。濃厚で芳醇な甘さの中に、オレンジなど柑橘系果実の風味も感じられます。
粘性が高く、滑らかな口あたり。
しっかりした骨格と肉厚な味わいで、後味はスッキリしているのが特徴です。果実味のある余韻が長く続きます。
2001は芳醇な甘さと複雑味が極上のバランス
シャトーディケム2001
2001年はソーテルヌ地区の当たり年で、シャトーディケムの貴腐ワインも極上な仕上がりになっています。
パーカーポイントは100点満点で、飲み頃は2100年までという100年寿命の評価。5つのワイン誌でも満点の評価を受けています。
濃厚な甘さと豊かな果実味が際立っているヴィンテージ。
熟した果実や白い花、ヴァニラの香りが強く立ち上がり、しっかりとしたミネラルが感じられます。生き生きした酸味と芳醇な甘みが非常に魅力的。長い余韻が続きます。
そのまま飲んでも良し・熟成しても良しの1998年
シャトー ディケム 1998
1990年と2001年ほどではありませんが、当たり年である1998年のシャトー・ディケムを紹介します。
1998年のシャトー・ディケムは1855年の格付けでプルミエ・スーペリュール(特別第一級)に格付けされた1本です。
1998年と言っても、まだまだ若いため10年、20年と自分で熟成して楽しむこともできます。
そのまま飲んでも充分甘く美味しいため、2通りの楽しみ方ができることが1998年の魅力です。
シャトー・ディケムの辛口白ワイン、イグレック
シャトー・ディケムは甘口の貴腐ワインだけでなく、辛口の白ワインも造っています。
「Y」と書いて「イグレック」と読みます。
もともとイグレックは貴腐ぶどうになりきれなかったぶどうだけを使って造られていました。
そのためイグレックの生産量は年によって異なり、生産されない年もありました。
しかし、やがてイグレックのためだけの区画を設けるようになり、2004年から毎年造られるようになりました。
貴腐ワインはセミヨンが主体となりソーヴィニヨン・ブランがブレンドされますが、イグレックは、ソーヴィニヨン・ブランが主体でセミヨンがブレンドされます。
Y イグレックの評価
世界的に権威のあるワイン専門誌ワイン・スペクテーターは、イグレックの2009年に100点満点中93点、2010年に94点という高得点をつけています。
Y イグレックの味わい
フレッシュなグレープフルーツや白桃のような果実味、ナッツのような香ばしさがあります。
辛口ながら貴腐ワインと同様にリッチな味わいが感じられます。
Y イグレックの値段
イグレックはインターネット通販で20,000~30,000円が相場です。
おすすめの当たり年
ボルドー イグレック ド シャトー ディケム
2015年は天候に恵まれた良年です。早くから成熟したブドウが優良な状態で収穫され、素晴らしい味わいに仕上がっています。
芳醇なアロマに、しっかりした樽香。力強くボリュームのある辛口で、アルコール度は高めです。
シャトー・ディケムの美味しい飲み方
ここではシャトーディケムの美味しい飲み方について紹介していきます。
シャトーディケムを美味しく飲むためには温度・グラス・飲むタイミングの3つポイントに気を付けることが大切です。
では早速3つのポイントを解説していきます。
フルボトル(750ml)の高級ワインには、
- ・高い
- ・飲み切るのが大変
- ・他と比較できない
という悩みがありますよね。
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4~8℃で保存すると甘さが引き立つ
シャトー・ディケムの保存は4~8℃がおすすめです。
一般的な白ワインは7~9℃前後で保存することが良いとされているため、シャトーディケムの場合は白ワインと同じくらいか、少し冷やしておきましょう。
4~8℃で保存する理由は、シャトー・ディケムの甘さがより引き立つからです。
冷やして飲むことによって、もともと甘いシャトー・ディケムの甘い味わいと芳醇な香りを楽しむことができます。
特にシャトー・ディケムは貴腐ワインのため非常に糖度が高く、冷やさずに常温で飲むと味がぼやけてしまうので気を付けましょう。
またシャトー・ディケムの保存にはワインセラーやワインクーラーを利用することがおすすめです。
もちろん冷蔵庫でも十分に冷やすことができますが、最高峰の貴腐ワインであるシャトー・ディケムをより楽しむためには、ワインセラーを使って適温に保ちつづけることが大切です。
ワインセラーを利用すればシャトー・ディケムはもちろん、赤ワインなどの他ワインも適切に保存できますよ。
家庭用のワインセラーについてはコチラを参考にしてみてください。
>>【ソムリエセレクト】おすすめワインセラー17選!家庭用にはコレ!
ワイングラスは小さめがおすすめ
シャトー・ディケムを美味しく飲むためには、小さめのワイングラスを用意しましょう。
シャトー・ディケムは糖度が高く甘いことが魅力的なワインのため、ワインの温度を低く保ったまま楽しめる小ぶりのワイングラスが良いからです。
ワイングラスが小さいと、飲んでいる最中に温度が上がることを防ぐことができます。
また1回で飲み切れる量しか注げないことも、温度を保つことに繋がるためおすすめです。
そのため、白ワイン用やデザート用のワイングラスを使うと良いでしょう。
食前酒やデザートと一緒に食後に楽しもう
シャトー・ディケムは食前酒や食後に楽しむことがおすすめです。
食後に楽しむ場合はシャトーディケムだけでも良いですし、デザートと一緒にいただくことも良いでしょう。
また食前酒としてシャトー・ディケムを飲む場合は通常よりも冷やしておくと、とろけるような甘さから食事を楽しむことができます。
自分の楽しむタイミングに合わせて、シャトー・ディケムの扱いを工夫して見てくださいね。
シャトー・ディケムと相性の良い食べ物・料理
シャトーディケムと相性の良い料理は以下のようなものです。
・甘いフルーツ
・はちみつ
・チーズケーキ
・フルーツケーキ
・フォアグラ
シャトー・ディケムと相性の良い料理は甘いものが多いです。
シャトー・ディケム自体が非常に甘いため、同じように甘い食べ物と合わせると美味しくいただくことができます。
とくにチーズのような発酵食品は、シャトー・ディケムもボトリティス・シネレアという貴腐菌から作られていることから非常に相性が良いです。
またフルーツやケーキはもちろん、はちみつの甘さともマッチするため、はちみつをかけてデザートとシャトー・ディケムを楽しむことも良いでしょう。
料理であればフォアグラとの相性が良いです。
実際にフランスではシャトー・ディケムのマリアージュ(相性の良い食べ物)としてフォアグラが有名です。
ぜひ自分の好みに合わせてシャトー・ディケムを楽しんでみてください。
最高峰のシャトー・ディケムを楽しもう!
シャトーディケムについてご紹介しました。
ヴィンテージによっては100年もの長期熟成に耐えられる最高峰のワイン。
その高い評価は、これからもずっと変わらないことでしょう。
いつかは味わいたい憧れのワインのひとつに、ぜひ加えてみてください。
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