「日本酒の美味しい飲み方が知りたい!」
と思いつつも
「バリエーションが豊富で選べない……」
という方もいるでしょう。
そこでこの記事では、SAKE DIPLOMA(日本酒のソムリエ資格)を持つ著者が、温度や器、割り方の違いごとに日本酒の美味しい飲み方を解説。
飲み方に応じたおすすめの日本酒まで紹介していきます。
飲み方で味が変わる日本酒
同じ日本酒であったとしても、飲み方を変えるだけで味わいや香りは変化します。
例えば、日本酒の「温度」は味に大きな影響を与える要素のひとつ。
甘味や酸味といった味覚は温度によって感じ方が異なりと言われており、
「冷やして飲む(冷酒)」
「温めて飲む(燗酒)」
かにより、印象は大きく変わります。
さらに酒器(おちょこやグラスなど)の構造によっても、香りの感じやすさや喉の通り方が変化するのです。
また、日本酒は「割らずにそのまま飲む」というイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし、ソーダやカクテルといった「ほかの飲み物で割る」ことでも楽しみ方はもっと広がります。
シンプルに氷を入れるロックスタイルならより爽やかに、ジュースで割ればもっと飲みやすくなるのです。
日本酒の美味しい飲み方とは?
日本酒は「温度」「器」「割り方」という3つの視点で、飲み方を考えることができます。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
1.温度
まず、日本酒は「冷酒」「常温」「燗酒」という3つの温度帯で楽しむことができます。
雑味やクセを取り除くなら「冷酒」
冷酒とは「冷やして飲む」ことです。
キリっと冷やすことで日本酒の味わいはシャープになり、爽快な飲み心地を感じられます。
また、冷やすと雑味やクセを感じにくくなるため、「もっと飲みやすくしたい」場合におすすめ。
冷酒の温度は一般的に5~15度程度と言われており、温度帯によって下記のように名称が変わります。
温度 | 5度 | 10度 | 15度 |
名称 | 雪冷え | 花冷え | 涼冷え |
状態 | 結露ができるほど冷やした状態 | 冷蔵庫から出してすぐの状態 | 冷蔵庫から出し、少し置いた状態 |
個性を感じるなら「常温」
常温は「日本酒の個性を最も感じられる」飲み方です。
味わいや香りがわかりやすく、米の風味や旨味もしっかりと堪能することができます。
ちなみに常温の日本酒は「冷や」と呼ばれることも。
これは冷蔵技術が無かった時代、温めていない日本酒を指す言葉として「冷や」が使われていたため。
今でもその呼び方が残っています。
なお、常温の温度は一般的に20~25度程度です。
甘みや香りが増す「燗酒(かんざけ)」
日本酒を「温めて飲む」方法が、燗酒です。
冬場に欠かせません。
燗酒にすることでふくよかさが増し、甘味や香りを感じやすくなります。
燗酒は45度前後あたりで最も甘味を感じ、45度以上になると辛口で、旨味の強い印象へと変化。
冷酒と同様、燗酒の温度によって名称は異なります。
温度 | 30~40度 | 45度 | 50度 | 55度 |
名称 | ぬる燗 | 上燗(じょうかん) | 熱燗(あつかん) | 飛び切り燗 |
状態 | 口に触れたときやや温かいと感じる温度 | 器が温かいと感じる温度 | やや熱いと感じる温度 | 器が熱くて持ちづらい温度 |
なお、この表を見てもわかる通り、よく聞く「熱燗」は基本的に50度以上の日本酒を指します。
2.酒器
酒器の形状や素材は、日本酒を飲むときの口当たりや香りの感じやすさに影響を与えます。
のど越しや香りの立ちやすさで選ぶ「おちょこ」
おちょこは最もポピュラーな酒器。
縦長のストレートな形のおちょこはのど越しが良くなり、口径の広いおちょこは表面積が広くなる分、香りが立ちやすくなります。
また、ガラス素材のものは見た目も涼しく冷酒向け。陶器製のものは保温性に優れているため、熱燗向きです。
香りを存分に味わうなら「ワイングラス」
日本酒の香りを楽しみたいのなら、ワイングラスがおすすめ。
口径が狭く、中間部分が膨らんだチューリップ型の形状をしているため、グラスの上部に香りが溜まりやすい構造となっています。
ちなみに「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」という品評会が開催されるほど、日本酒をワイングラスで飲むことは浸透してきています。
一度で二度楽しめる「升酒」
升の上に乗せたグラスに日本酒を注ぐ、升酒。
グラスから溢れた日本酒が升にこぼれることから「盛り切り」「もっきり」と呼ばれることがあります。
升酒を飲む手順としては、次の通り。
1.升ごと手で持ち、グラスに入った日本酒をひと口飲む
2.グラスだけを持ち、飲む
3.グラスが空になったら、升に入っている日本酒をグラスに移し替えて飲む
そのほか、升から直接飲んでもOK。
升の素材である木の香りを感じられます。
このようにグラスと升、2つの飲み方を体験できる升酒。
小さなグラスと受け皿を使い、家庭でもぜひ再現してみてください。
3.割り方
日本酒に割り材を入れると飲みやすさが増し、初心者やお酒が苦手な方にもおすすめです。
すっきりとした味わいの「ロック」
氷を入れると、キリっと冷えた爽やかな味わいを楽しめます。
常に冷えた状態が保たれるため、すっきりとした味わいが長持ち。
氷が溶けることで日本酒のアルコール度数も抑えられ、飲みやすくなります。
シュワっとはじける炭酸を感じる「ソーダ割り」
ここ数年流行している飲み方のひとつが、ソーダ割。
アルコール度数がぐっと抑えられるのはもちろん、シュワっとはじける炭酸が日本酒独特の香りを引き立てます。
爽快なのど越しで、飲みやすさも抜群。
レモンなどの柑橘類を絞れば、暑い季節にピッタリな日本酒サワーの出来上がりです。
日本酒初心者なら「カクテル」もあり
ジュースで割って、カクテル感覚で楽しむこともできます。
とくに日本酒初心者におすすめ。
レモンやライムジュース、抹茶などが日本酒カクテルにはよく使われています。
口の中のリセットや飲み過ぎ防止には「和らぎ水」を
和らぎ水とは、日本酒と一緒に飲む水のこと。
いわゆる「チェイサー」です。
口の中をリセットし、次の一杯をまた美味しく飲むという役割があります。
ほかにも、飲みすぎ防止やアルコールによる脱水症状を防ぐというメリットも。
美味しく健康に飲むために、和らぎ水もセットで用意しておきましょう。
日本酒の種類別!おすすめの飲み方とは?
「純米酒」「吟醸酒」「吟醸酒」「生酒」と、主に4つの種類に分かれる日本酒。
それぞれ、美味しい飲み方も異なります。
そこで、4つの種類別におすすめの飲み方も紹介していきます。
純米酒
米と水のみを原材料に使った日本酒です。
・熱燗
・ロック
米からのコクや旨味がしっかりと感じられるため、「常温」や「熱燗」で、本来の美味しさを引き立てるのがポイント。
ただ、力強い味が特徴であるため、ロックで飲んでも風味は崩れません。
吟醸酒
華やかな香りが楽しめる、雑味のないクリアな日本酒です。
・ワイングラス
・ソーダ割り
「吟醸香」と呼ばれるメロンやパイナップルなどのフルーティーな香りが特徴であるため、香りを楽しむためにワイングラスで飲むのがおすすめ。
フルーティーな香りは加熱することで揮発してしまうため、冷酒との相性良し。
ソーダ割りにすれば、はじける炭酸とフルーティーな香りで、より一層スッキリ感が増します。
吟醸酒
キリッと引き締まった切れ味が特徴の吟醸酒。
・カクテル
本醸造の日本酒は程よい旨味とキレの良さのバランスが取れており、どの温度帯でも美味しく飲めます。
キンキンに冷やして飲んでも良し、温めても美味しく飲める万能タイプ。
クセの少なさを活かし、日本酒カクテルのベースに使うのもおすすめです。
生酒
加熱殺菌処理がされていない生酒は、通常の日本酒にはない新鮮でほのかに甘い味わいと、フルーティーな香りが特徴です。
・ワイングラス
・ロック
・ソーダ割り
フレッシュ感を楽しむために、冷やして飲むのがおすすめ。
濃厚な味わいの銘柄が多いためロックやソーダで割って飲むと、ほどよい爽快感を味わえます。
飲み方別で選ぶおすすめの日本酒15選
ここからは日本酒のソムリエ資格(SAKE DIPLOMA)を有し、酒屋の立場でこれまで様々な日本酒を飲んできた著者が、飲み方別におすすめの銘柄を紹介していきます。
冷酒におすすめの日本酒5選
久保田 千寿
久保田 千寿
生産地:新潟県
アルコール度数:15%
淡麗でキリっとした味わいの吟醸酒です。
新潟淡麗辛口を体現したかのような、後に残らないさらりとした口当たりが特徴。
華やかな果実の香りも感じられ、食事の邪魔をしないバランスの良さがあります。
出羽桜 桜花 吟醸酒
出羽桜 桜花 吟醸酒
生産地:山形県
アルコール度数:15%
吟醸酒のブームを生み出した、先駆け的存在。
飲み飽きない味わいと、フルーティーな香りが感じられます。
これを飲んで「日本酒を好きになった」という方も多くいるほど。
香りを充分に感じるため、ワイングラスで飲んでみてください。
作 恵乃智
作 恵乃智
生産地:三重県
アルコール度数:15%
ジューシーな味わいの純米酒。
洋ナシのようなフルーティーな香りが感じられます。
フレッシュな甘味と酸味があり、キンキンに冷やして飲むのがおすすめ。
ワイングラスで飲むと、より豊潤な香りを楽しめます。
讃岐くらうでぃ
讃岐くらうでぃ
生産地:香川県
アルコール度数:6%
まろやかで甘酸っぱい、にごり酒。
6%とアルコール度数は低く、カルピスのような甘さがあり、非常に飲みやすい仕上がりです。
良い意味で日本酒らしさが控えめのため、初心者の方にうってつけ。
冷酒だけでなく、ロックやソーダ割りでも美味しくいただけます。
七田 無濾過生酒 七割五分磨き
七田 無濾過生酒 七割五分磨き
生産地:佐賀県
アルコール度数:17%
どっしりとした味わいが楽しめる無濾過生酒。
米の旨味を引き出す作り方をしており、濃厚な味が特徴です。
イチゴやカシスなど、ベリーの香りも感じられます。
濃い味付けの料理と相性抜群です。
燗酒におすすめの日本酒5選
大七 生酛純米
大七 生酛純米
生産地:福島県
アルコール度数:15%
燗酒の品評会で数々の受賞歴を誇る、豊かなコクの純米酒です。
天然の乳酸菌を使った「生酛造り」が採用されており、飲みごたえのある仕上がり。
温めることでまろやかさと、クリーミーな香りが際立ちます。
後味のキレも良く、食事との相性も抜群です。
神亀 純米
神亀 純米
生産地:埼玉県
アルコール度数:15.5%
まるみのある熟成した味わいの純米酒。
2年間の熟成期間を経ることで、さらりとした口当たりとコクを感じます。
熱燗にすることで旨味が増し、食事の美味しさをより引き立ててくれる存在に。
香りは穏やかですが、日本酒のしみじみとした旨味を堪能できる銘柄です。
八海山 特別本醸造
八海山 特別本醸造
生産地:新潟県
アルコール度数:15.5%
なめらかでキレの良さ抜群の特別本醸造酒です。
すっきりと喉を通っていく辛口な味わいで、食事の邪魔をしません。
冷酒だとすっきりとした飲み心地を楽しめますが、熱燗にすることで米の旨味や麹(こうじ)の風味が出ます。
天狗舞 山廃純米
天狗舞 山廃純米
生産地:石川県
アルコール度数:16%
山廃仕込み(やまはいじこみ)の代名詞とも呼ばれている日本酒。
コクが出やすい山廃仕込みの日本酒らしく、厚みのある個性的な味わいが楽しめます。
山吹色の見た目が美しく、酸味と旨味のバランスも秀逸。
熱燗にすることで、よりふくよかな味わいになり、飲み心地が良くなります。
剣菱 上撰
剣菱 上撰
生産地:兵庫県
アルコール度数:15%
米の風味がしっかりと感じられる仕上がりで、甘味や旨味の乗ったどっしりとた味わいが特徴の日本酒です。
温めると香りはより強まりますが、しつこさはなく調和された味わい。
おすすめの温度帯は常温から熱燗までです。
ロックやソーダ割りにおすすめの日本酒5選
ロック酒の上善如水
ロック酒の上善如水
生産地:新潟県
アルコール度数:10~11%
ロック専用に作られた純米酒です。
そのまま飲むと個性が強すぎますが、氷を入れることで次第にまろやかですっきりとした味わいに変化します。
玉川 アイスブレイカー
玉川 アイスブレイカー
生産地:京都府
アルコール度数:17%
こちらもロック専用で作られた日本酒。
そのまま飲むとガツンとした味わいがありますが、氷と馴染むことで風味や口当たりが軽くなります。
無濾過生原酒のため、氷が溶けても日本酒の味わいが薄まらないのが特徴。
飲みやすさと飲みごたえを両立した1本です。
ふなぐち 菊水一番しぼり
ふなぐち 菊水一番しぼり
生産地:新潟県
アルコール度数:19%
フレッシュで濃厚な味わいの生原酒。
みずみずしい味わいと香りが感じられ、飲み口がよく、するりと飲める日本酒です。
アルコール度数は19%と高めですが、それを感じさせない飲みやすさが人気の秘密。
冷酒で飲んでも美味しいですが、強いアルコールが苦手な方はロックやソーダ割りで。
賀茂鶴 純米 にごり酒
賀茂鶴 純米 にごり酒
生産地:広島県
アルコール度数:12~13%
甘味と酸味を楽しめるにごり酒です。
にごり酒特有のクリーミーな口当たりがあり、甘酸っぱい味わいを楽しむことができます。
そのまま冷やして飲んでも美味しいですが、ロックやソーダ割りにすることでよりすっきりした味わいに。
食前酒や食後酒としておすすめです。
風の森 純米 無濾過生原酒
風の森 純米 無濾過生原酒
生産地:奈良県
アルコール度数:17%
無濾過生原酒にこだわる蔵元の1本。
フレッシュでジューシーな味わいが感じられ、米の旨味もしっかりとある濃厚な仕上がりです。
原酒なのでアルコール度数が強いと感じる方は、ロックにして飲むのがおすすめ。
ワイングラスで香りを楽しみながら飲むのも良いでしょう。
さいごに
飲み方によって味わいが変化する日本酒。
冷やすと雑味やクセを感じにくい爽快な飲み心地に、温めると甘味や香りをより感じやすくなります。
さらに、香りをより感じたいならワイングラスで飲むのがおすすめです。
なお、初心者はストレートだけでなく、ソーダやジュースで割ることも検討したいところ。
日本酒を飲むときは口の中のリセットや飲み過ぎ防止のために、和らぎ水もセットで用意しておきましょう。
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