アードベッグはウイスキーの聖地と名高いスコットランドの「アイラ島」で製造されるウイスキー。
アイラ島のウイスキーは個性が強いことで有名ですが、その中でもこちらは別格。
力強いピート香に包まれ、そのあとにゆっくりと甘みが顔を出します。
そんなアードベッグについてこの記事では、ウイスキーコニサーエキスパート資格を持つ著者が、特徴やおすすめ銘柄を解説します。
アードベッグの特徴
【特徴1】アードベッグの故郷は「アイラ島」
アードベッグ蒸留所はアイラ島にあります。
アイラ島はインナーへブリディーズ諸島の最南端に位置。
面積約637㎢ 淡路島より一回り大きい島です。
島の4分の1はピート層に覆われています。
「アードベッグ」とはゲール語で小さな岬の意味。
その名の通り、岬に蒸留所は建てられており、潮風が独特の風味をウイスキーに付加しています。
【特徴2】アードベッグ蒸留所の歴史
アードベッグ蒸留所が創設されたのは、1798年。
当初は密造酒だったため、少量のみ生産されていました。
1815年創業者「ジョン・マクドゥーガル」が商業用ライセンスを取得し、本格的に生産開始。
しかしながら、経営難に何度も追い込まれ、1982年ついに創業停止。
1989年、アライド・ドメック社が買収し、操業再開されましたが運営は安定しませんでした。
ようやく安定したのは、1997年「グレンモーレンジ社」に買収された頃から。
創業から182年で、ようやく経営に成功したといえる状態になったのです。
その後、2004年にグレンモーレンジ社はルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー社の傘下に。
ウイスキー界において、アードベッグ蒸留所の存在はますます大きくなりました。
現在では世界的な賞を何度も獲得し、ピーティーなウイスキーの代表格といわれるまでに成長しました。
【特徴3】ウーガダール湖の水を採用し、冷却ろ過をしない
仕込み水 | ポットスチル |
ロッホウーダガール(ウーダガール湖) | 初留1基、再留1基 どちらもランタンヘッド型 |
アードベッグ蒸留所の製法の中でも特筆すべき点は3つ挙げられます。
1つは目蒸留所近郊にあるウーガダール湖の水を採用していること。
アイラ島のピート層を流れているので黒く濁っており、ピーティーな香りがします。
この水を使用する事により、深いピート香のするウイスキーが出来上がるのです。
2つ目は、冷却ろ過をしていないことです。
熟成済みのウイスキーを樽から出すと、白く沈殿した物体が出てきます。
このままボトリングしては、見栄えが悪いため通常は濾過するのです。
ただ、この白い沈殿物には旨味成分も含まれており、それをむざむざ捨ててしまうことに。
それを活かすため、アードベックは冷却ろ過をしません。
そのため、ウイスキーの味をダイレクトに味わうことができるのです。
3つ目は再留釜のラインアームの所に精留器が取り付けられている点。
これは、アイラ島の蒸留所の中ではアードベッグだけ。
銅とのコンタクトが大きくなり、スモーキーでありながら、果実のような甘みを持つウイスキーが誕生するのです。
【特徴4】ピートで味わいの核である「スモーキーさ」を作る
「ピート」(泥炭)とは、シダやコケなどの植物が分解されず堆積した地層です。
現在もスコットランドでは、掘り出し乾燥させ燃料として使用されています。
ウイスキーを作るためにはまず、糖化させなければなりません。
糖化する際、スコッチでは大麦の中にある酵素を利用します。
そのためには、大麦を水に浸して芽を出させる必要があるのです。
その後、芽の成長を止め乾燥させる際、燃料として使用するのが「ピート」です。
ピートを燃料として乾燥させると、原料である大麦にもピート香が付与されます。
そのため、ピート使用量によって完成したウイスキーの香りは変化するのです。
ピート香の強弱はフェノール値と言い、ppmという単位で表現されます。
ppmの値が高ければ高いほど、ピーティーでスモーキーなウイスキーに。
アードベッグのフェノール値は55ppm。
アイラ島の中でも際立って高い値です。
【特徴5】アードベギャンが心待ちにする「アードベッグデイ」
アードベッグの熱烈な愛好家「アードベギャン」が、毎年心待ちにしているのが「アードベッグデイ」です。
アイラ島では、毎年5月末〜6月初旬に「アイラ・ウィスキー・フェスティバル」というウイスキーと音楽の祭典が催されます。
期間中、日替わりでアイラ島の各蒸留所が「オープン・デイ」と称し、無料試飲会や販売会などで自社のアイテムを紹介。
熱心なウイスキー愛好家が、現地のみで購入できるアイテムを求めてイベントを訪れます。
この「オープン・デイ」の最終日を彩るのがアードベッグ。
2012年よりこの日は「アードベッグ・デイ」と定められました。
世界中のアードベギャンと手を取り合い、ウイスキーに対して感謝し、祝う日。
毎年、限定ウイスキーが発売されており、世界中のアードベギャンが楽しみにしています。
銘柄の選び方
【選び方1】スタンダード品か限定品かで選ぶ
アードベッグのスタンダード品は「アードベッグ10年」「アードベッグ5年」「アードベッグ・アンオー」「アードベッグ・ウーガダール」
「アードベッグ・コリーヴレッカン」の5本。
それ以外は限定品のため、入手困難のアイテムもたくさんあります。
ネットなどで購入する場合、プレミア価格で販売されていることがほとんど。
それだけにアードベギャンの方にプレゼントされたらきっと喜ばれるでしょう。
【選び方2】ボトラーズアイテムを選ぶ
ボトラーズとは樽ごとウイスキーを購入し、独自の製法で熟成・瓶詰めを行う業者。
アードベッグ蒸留所はボトラーズ業者にあまり樽を販売しないことで有名です。
その希少さゆえ、販売価格は高騰しがちです。
けれども、オフィシャルボトルでは見えて来なかった魅力を発見できるのがボトラーズウイスキーです。
【選び方3】カスクストレングスのアイテムを選ぶ
カスクストレングスとは、加水をせずに樽から出したままボトリングしたウイスキーのこと。
加水されていないので、しっかりと存在感を楽しめます。
レギュラー品の中では「コリーブレッカン」と「ウーガダール」がこれにあたります。
アードベッグのおすすめランキング10選
10位 アードベッグ10
アードベッグ10
アードベッグらしさを知るにはまずこちらから。
口に含むとレモンの様な香りとスモーキーさが程よく調和しているのが魅力。
その後、シャープに抜けていきます。
後味がスッキリしているので、ハイボールなどで召し上がるのもおすすめです。
熟成年数 | アルコール度数 |
10年以上 | 46度 |
9位 アードベッグ スコーチ
アードベッグ スコーチ
2021年の「アードベッグ・デイ」にリリースされたアイテム。
スコーチというのは焦がすという意味です。
ラベルには炎が書かれています。
これは、ドラゴンとアードベッグ蒸留所マスコット犬「ショーティー」の物語がもとになっています。
物語を簡単に説明すると、アードベッグ蒸留所の3番倉庫にドラゴンが住み着いてしまいました。
しかし、ドラゴンは「ショーティー」の奮闘で退散。
ドラゴンは究極のスピリッツに姿を変え、戦いの炎によって焦げた樽が勝利の証として残ったという話です。
鼻を少し近づけただけで、スモーキーな香りがどっと押し寄せてきます。
そのあと、口に含めば、ピリッとした風味とハッカ飴のような味わいを感じます。
アードベッグ史上一番甘いと言われるウイスキー。
甘さをじっくり味わいたい方は、ストレートで召し上がると良いでしょう。
熟成年数 | アルコール度数 |
– | 46度 |
8位 アードベッグ ウィービースティー 5年
アードベッグ ウィービースティー 5年
2020年に新しく定番商品に加わった銘柄。
ウィービースティーとは「小柄だけど手のつけられない野獣」という意味。
オロロソシェリー樽とバーボン樽でそれぞれ熟成された物をバッティングして造られたウイスキーです。
この樽構成はウーガダールと同じ。
味わいは軽やかでありながら、スモーキーさとシェリー樽由来の甘味が長く続きます。
少し加水させると、柑橘系のフレッシュさも追加。
トワイスアップにして、ドライフルーツなどと合わせて召し上がるのがおすすめです。
熟成年数 | アルコール度数 |
5年以上 | 47.4度 |
7位 アードベッグ コリーブレッカン
こちらのアイテムは、元々実験的に作られた一品。
アードベッグ・コミッティの会員向けに5000本限定でリリースした結果、大好評だったためにスタンダードナンバーに加えられました。
「コリーヴレッカン」はアイラ島付近で発生するヨーロッパ最大の渦潮。
ラベルにも渦潮が描かれています。
味わいも、渦潮を彷彿させるような荒々しい煙とベーコンを焼いた風味が共存。
燻製肉などと一緒に召し上がるのに、ピッタリなアイテムです。
カスクストレングスのため、アルコール度数は高め。
熟成年数 | アルコール度数 |
– | 57度 |
6位 アードベッグ ウーガダール
アードベッグ ウーガダール
こちらのアイテムも定番銘柄。
ウーガダールは仕込み水に使われている湖の名前。
2009年に「ワールド・ウイスキー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた銘柄です。
少し含むだけでスモーキーさが口一杯に広がり、レーズンのような甘みが続きます。
アードベッグの銘柄の中ではマイドルなウイスキー。
ロックにすると、口当たりがバニラミルクのようになめらかになります。
熟成年数 | アルコール度数 |
– | 54.2度 |
5位 アードベッグ グルーヴス
アードベッグ グルーヴス
2018年の「アードベッグ・デイ」に合わせてリリースされた限定銘柄。
「グルーヴス」とは深い溝のこと。
バーボン樽原酒と、内側をしっかり焼いて深い溝を施した赤ワイン樽で、熟成した原酒を混ぜ合わせています。
そのため、果実のような甘さもしっかりと感じられる品。
ピリッとしたコショウのような風味も続きます。
味わいが濃厚なウイスキーなのでハーフソーダなどにしても、しっかりと甘みをお楽しみいただけます。
熟成年数 | アルコール度数 |
– | 46度 |
4位 アードベッグ アンオー
アードベッグ アンオー
残念ながら、2022年7月に日本市場販売停止してしまうスタンダード銘柄。
今後は並行品ならネットなどで購入できるかもしれません。
「アンオー」とはアイラ島にあるオー岬より名付けられました。
オー岬は長年荒波で削られ、丸みを帯びた地形。
まさにこのアイテムのまろやかな味わいを表現するのにピッタリ。
ファーストフィルのバーボン樽・ペドロヒメネスシェリー樽・バージンオーク樽で、各々長年熟成させた原酒をバッティング。
味わいはミルクチョコレートと焦げたパンと葉巻の煙が美しいハーモニーを奏でています。
熟成年数 | アルコール度数 |
– | 46.6度 |
3位 アードベッグ 20年 1996 チーフタンズ 46.5% 700ml
アードベッグ 20年 1996 チーフタンズ 46.5% 700ml
ボトラーズ「イアン・マクロード・ディスティラーズ社」から発売されているアイテムです。
同社はグレンゴイン蒸留所とタムドゥー蒸留所を所有。
世界中の愛好家から大絶賛されているボトラーズの一つです。
20年熟成されているため、幾層にも重なる深い味わいが魅力。
オレンジ、スモーク、バニラ、レモンと様々なテイストを感じられるでしょう。
余韻もクッキーのような甘さと、スモーキーさが混じり合いながら長く続きます。
数量限定アイテムのため、入手困難ですがアードベギャンなら一度は味わっていただきたい極上品です。
熟成年数 | アルコール度数 |
20年以上 | 46.5度 |
2位 アードベッグ 20年 2001 オールド モルト カスク Y’sカスク
アードベッグ 20年 2001 オールド モルト カスク Y'sカスク
老舗ボトラー「ダグラスレイン社」から派生した「ハンターレイン社」にて、リリースされている商品です。
こちらは2000年〜2001年に蒸留され、その後20年以上熟成し、そこから1つの樽を選んでその原酒だけをボトリング。
非常に希少性の高いウイスキーです。
20年熟成させているので、荒々しさを感じません。
スモーキーでありながらもキャラメルのような甘さに包まれます。
ストレートでじっくり味わうのにぴったりなウイスキー。
ウイスキー愛好家の方へのプレゼントにもピッタリでしょう。
熟成年数 | アルコール度数 |
20年以上 | 49.3度 |
1位 アードベッグ ドラム
アードベッグ ドラム
2019年の「アードベッグ・デイ」にてリリースされた限定品。
原酒をラム樽で追熟させて製造。
限定品はバッティング手法を採用することが多いなか、追熟手法が用いられています。
アードベッグ銘柄のなかでもバランスの良さはピカイチ。
主張が強すぎて飲み疲れてしまうようなこともありません。
パイナップルのような甘さとスモーキーさがじわっと口の中で広がり、心地良い余韻を楽しむことができます。
とくに少し加水すると香りが華開きます。
ストレートにスポイトで水滴を垂らしたりしながら、じっくり召し上がっていただきたい一品です。
熟成年数 | アルコール度数 |
– | 46度 |
アードベッグの購入方法
【方法1】店舗で購入する
スタンダード品は店舗でも通常販売しています。
これからアードベッグに挑戦される方は店舗で購入されると良いでしょう。
最近、量り売りをするお店も増えてきました。
スタンダードアイテム5種類を少しずつ購入し、飲み比べてみるのも面白いかもしれません。
【方法2】ネットで購入する
限定品はほとんどの場合ネットでしか購入できません。
ただ、プレミア価格になってしまっていることが多いので、予算と相談しながら購入しましょう。
【方法3】アードベッグ コミッティーストアに登録して購入する
「アードベッグコミッティー」はアードベッグファンのための無料会員サイト。
会員になることで、会員限定のサービスが受けられます。
ファンがアードベッグ蒸留所を支え、二度と閉鎖に追い込まれないようにという想いから発足されました。
今まで日本からはコミッティサイトで直接ウイスキーを購入することはできませんでした。
しかし、2022年5月12日コミッティーメンバー限定のECサイトが開設。
これにより「アードベッグコミッティー」に登録すれば、今まで入手困難だったアイテムも購入可能に。
アードベッグコミッティーサイト限定品を購入したい方は、どうぞ活用してみてください。
まとめ
アードベッグはウイスキーファンのためにあるといっても過言ではありません。
アードベッグデイにまったく違うアイテムを毎年登場させるので、ファンはそれを楽しみにしています。
しかし、限定品は発売から即プレ値がついてしまうのでなかなか購入できません。
これからアードベッグに挑戦される方はレギュラー品からぜひお試しください。
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