イタリアワインの特徴は?品種から有名銘柄までソムリエが完全解説

2019/05/09 ワインの基礎知識

「イタリアワインの特徴は?」
「どのような銘柄があるの?」

長靴の形をしたワイン大国、イタリア。

南北に長く、3方を海に囲まれた恵まれた環境から、「エノトリアテルス」(ワインの大地)とも称され、生み出されるワインは世界一を誇ります。

この記事では、そんなイタリアワインの特徴について詳しく解説していきます。

有名な銘柄も紹介しているので、ぜひワイン選びの参考にしてください。

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執筆者/監修者

佐々木 健太

J.S.A. ソムリエ・エクセレンス

ソムリエ/年間受講者数日本一を誇るカリスマワインスクール講師  21歳でソムリエ資格を取得。南フランスにある一つ星レストラン「Keisuke Matsushima」にて研鑽を積み、帰国後は南青山「L’AS」を経て、株式会社WINE TRAILを創業。ワインのサブスク「HOME WiNE」を手掛ける。YouTubeチャンネル「ソムリエ佐々木」を運営。第9回全日本最優秀ソムリエコンクールファイナリスト。

イタリアワインの歴史と今

ワインの始まりは数千年以上前

イタリアでのワインの歴史の始まりは、遡ること青銅器時代。

ワイン造りの技術はギリシャや北アフリカから南イタリアに伝わったと言われています。

ギリシャ人から伝わってきたブドウを、古代ローマ人はさらに土地にあったものを選んで植えていったことで、さらにワインの質が向上しました。

紀元前4~3世紀頃には、イタリア各地でワインが造られるようになり、この頃にはイタリア中部に小アジアから移り住んだエトルリア人により、フランスへと輸出されていたといいます。

それから中世に至るまで、ワインの飲み方はローマ時代と変わることなく受け継がれ、ローマ帝国の拡大とともに広がったワインのたしなみ方は国を超えて伝わっていったとされています。

民衆の飲み物として広まったイタリアのワイン

17世紀になり、ガラス瓶で販売されるようになってから、ワインは民衆の飲み物として定着しましたが、1816年にフランスのワイン商が「イタリアは欧州で一番のワインを造れるのに醸造技術の低さから最低のワインを造っている」と書き記されました。

その後、1800年代の終りにイタリアではようやく醸造学校が創設されます。

イタリアワインが世界的に評価されるようになったきっかけは、1873年のウィーン万国博覧会。多数のイタリアワインが入賞をしたことを契機に、輸出が増えるようになりました。

質より量のワイン造りから、量より質のワイン造りへの転換点にもなっていると言えるでしょう。

現在では、イタリア20州全てでワインを造り、その質も高品質なものが増えています。南北に長く気候も微妙に異なることから、多様なワインを生み出す国として知られるようになりました。

400以上の土着品種もあり、それらの個性やテロワールを大切にしたワインを生産しています。

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イタリアワインの産地と地図

イタリアは20州全ての地域でワインが生産されています。地元消費のカジュアルなものから、輸出向けの高級なものまで多種多様で、地元の食と密接に結びついた、個性豊かなワインが造られています。

抑えておきたいイタリアの代表産地と特徴

中でもおさえておきたいのはこの2つの地域。

高級ワインが造られる代表的な産地でもあります。

ピエモンテ

イタリア北部の州。州都は工業都市トリノ。

良質なワインを多く生み出すことで知られている州で、ネッビオーロで造られる、イタリアワインの王様と言われるバローロや、その弟分のバルバレスコがその筆頭でもあります。イタリアで最も多くのDOPがあり、それ以外にも素晴らしいVdTも数多く造られています。

トスカーナ

イタリア中部の州。州都は職人の街フィレンツェ。その精神はワインにも通じ、数多くのDOPのワインが生み出される州です。サンジョヴェーゼを使ったワインが有名で、キャンティ・クラッシコやブルネッロ・ディ・モンタルチーノがよく知られています。

白ワインはヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノなどのスッキリした白ワインを造っている地域です。他には「スーパータスカン」と呼ばれる高級ワインが数多く産出されることでも知られています。

イタリア北部

イタリア北部は比較的冷涼な地域が多く、ネッビオーロで造るバローロ、バルバレスコなどの高級ワインを生むことでで昔から知られているトスカーナ州を擁しています。冷涼なことから、白ワインの生産が多いことでも知られています。

ヴァッレ・ダオスタ

北西部にある州。ワインの生産量は少なく、ほとんどが地元で消費されています。

ピエモンテ

イタリア北部の主要産地。バローロ、バルバレスコなどの高級ワインで知られています。州都は工業都市トリノ。

リグーリア

港町ジェノヴァが州都。カジュアルな白ワインを中心に生産しています。

ロンバルディア

大都市ミラノが州都。デイリーなものから高級なものまで数多くのワインが造られている地域です。瓶内二次発酵で造るフランチャコルタがよく知られています。

トレンティーノ・アルト・アディジェ

イタリア最北の州。ドイツ語圏とイタリア語圏があるため、ピノ・ネロやリースリングなどの品種が造られており、ラベルも二ヶ国語併記になっています。

フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア

オーストリアとスロベニアに接した北東部の州。冷涼な気候の中で白ワインを造っています。

エミリア・ロマーニャ

美食の街ボローニャが州都。微発泡のランブルスコなどで知られている産地です。

イタリア中部

長靴のふくらはぎの部分。西側にはティレニア海、東側にはアドリア海があり、中央に山脈が走っています。キャンティで有名なトスカーナ州はよく知られているワイン産地です。

トスカーナ

州都は職人の街フィレンツェ。中部で最もよく知られているワイン産地です。サンジョヴェーゼで造るキャンティ・クラッシコやブルネッロ・ディ・モンタルチーノのほか、高級ワインとして知られる、スーパータスカンがよく知られています。

ウンブリア

州都は日本ではよく知られているペルージャ。内陸の州で、モンテファルコ・サグランティーノがよく知られているワインです。

マルケ

アドリア海側の州。ヴェルデッキオで造るスッキリとした白ワインで知られています。

ラツィオ

州都は首都ローマ。カジュアルなワインが多い州で、8割が白ワインです。

アブルッツォ

アドリア海側の州。カジュアルな赤ワインでよく知られている州。モンテプルチアーノ・ダブルッツォが有名。

モリーゼ

ティレニア海側の小さな州。ワインの生産量は少なめです。

イタリア南部

温暖で日照量に恵まれた地域。造り出されるワインも赤ワインが中心で、果実味の豊かな濃厚なものが多いのが特徴です。

カンパーニャ

州都はナポリ。古代ローマ時代からワイン造りが盛んな土地です。アリアニコで造るタウラージが有名です。

プーリア

「ヨーロッパの酒蔵」と呼ばれるほどかつてワイン生産が盛んだった地域で、現在でも生産量で上位に入る州です。カジュアルなワインが多く、プリミティーヴォなどの生産が盛んです。

バジリカータ

南部の中では標高の高い比較的冷涼な土地として知られる地域。量は少ないですが良質の赤ワインを産み出しています。

カラブリア

長靴のつま先の部分の州。ガリオッポで造られるチロなどでよく知られている地域です。

シチリア

イタリア最大の島。標高の高い地域でブドウ栽培を行っており、近年ワインの品質が向上していることでもよく知られています。カラブレーゼなどの土着品種を育てています。

サルデーニャ

フランス、コルシカ島の南に位置する島。ヴェルメンティーノを使ったスッキリとした白ワインなどが有名です。

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イタリアワインのブドウ品種

イタリアワインのブドウ品種は、その土地に根ざした品種が多く、その数も400を超えると言われています。
その中から代表的なものをご紹介します。

黒ブドウ品種

サンジョヴェーゼ

キャンティなどに使用されるブドウ品種。トスカーナ州を中心に栽培されています。
濃いルビー色でしっかりしたタンニンの、厚みのあるバランスの良いワインが生まれます。

ネッビオーロ

バローロ、バルバレスコなどの高級ワインに使われるブドウ品種。ピエモンテ州を中心に栽培されています。
深いガーネットの色合いとしっかりしたタンニン、厚みがあり長熟なワインが生まれます。

>>ネッビオーロについてはこちらの記事から

バルベーラ

ピエモンテ州とロンバルディアで多く栽培されている品種。
鮮やかなルビー色でスミレの香りを持つワインができます。デイリーなものから上級のものまで幅も広いです。

ドルチェット

ピエモンテ州などで育てられているブドウ品種。
鮮やかなルビー色と若々しい果実の香りやほんのりとした苦み、程よい厚みとコクのあるワインが出来上がります。

ピノ・ネロ

ピノ・ノワールのイタリア語名。
長時間かけて発酵を行い、オークの小樽で熟成させることが多い。一般的には若いうちに飲みきるものが多い。

白ブドウ品種

トレッビアーノ

フランスではユニ・ブランという品種で、イタリア全土で育てられています。
麦わら色の、独特のワインらしい香りにあふれた、スッキリしたワインが出来上がります。

マルヴァジア

イタリア全土で育てられているブドウのひとつ。
栽培地によって個性が全く違うものができるが、フレッシュでスッキリしたものが多い。

モスカート

日本で言うマスカットのこと。イタリア全土で育てられています。
フルーティーでフローラルな香りが特徴のワインは、ほんのり甘めに造られることが多い。

ガルガネーガ

ソアヴェに使われるブドウ品種。ヴェネト州で多く栽培されています。
ほんのりと緑がかった麦わら色で、フレッシュなアロマが特徴のワインが出来上がります。

ピノ・グリージョ

イタリア北部で栽培されている品種のひとつ。
フルーティーで干し草やくるみのような香りを持つワインが出来上がります。

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イタリアワインの格付け

イタリアワインは1963年に制定された格付けにより、上から、DOCG、DOC、IGT、VdTに分類されていましたが、2008年に改正されたEUのワイン法に合わせて2010年に改正され、かつてのDOCGとDOCはDOPに、IGTはIGPに、地理的表示のないワインはVinoとされ、3種類になりました。

DOPとは

DOPに分類されるワインは、ブドウの生産地や栽培方法、使用品種が決められており、その上官能検査に合格したもの。いわばエリートのワインたちです。

IGPとは

IGPは生産地域や使用品種などが定められていますが、DOPに比べると保護する区分けが広く、規定も緩やかなものになっています。

Vinoとは

気軽なテーブルワインとして、生産地域の表示がありません。比較的自由に造られています。

この格付けは、品質の良さを計るものというよりは、規定通りに造られたものが上位の格付けになるというものではありますが、結果的にはそうした規定をクリアしたものが高品質なものとなっています。

ただし、生産者の意向により、規定をクリアしない栽培品種や醸造方法を用いて、本来なら上級のワインにまさるほどの品質なのに、あえてVinoで販売する、というケースもあります。

イタリアの有名ワイン銘柄

イタリアワインはカジュアルなものから高級なものまでいろいろありますが、ここに挙げる銘柄は、イタリアワインの中でも代表的な高級ワインの一部になります。
他にもさまざまな造り手のワインがたくさんあるので、予算に応じて選べば、イタリアワインの奥深い世界に触れることができます。

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バローロ(ルチアーノ・サンドローネ)

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ブルゴーニュのブドウ造りの考え方をバローロに持ち込んだとして知られる造り手。

高品質でモダンなスタイルのバローロは、人気漫画「神の雫」でも取り上げられたことで有名になりました。

香りバラ、クローブ
酸味★★★★★
ボディ★★★★★
渋み★★★★★
佐々木
バローロの伝説的生産者の一人として知られるルチアーノ・サンドローネ。20年は熟成も可能なハイポテンシャルな一品です。

バルバレスコ(ガヤ)

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世界でもトップクラスの生産者。イタリアワインの帝王として知られているアンジェロ・ガヤが手がけるワインです。

それまでバローロの弟分と言われていたバルバレスコの名声をここまでにしたのは、ひとえにアンジェロ・ガヤの才能の賜物と言えるでしょう。

香りバラ、リコリス
酸味★★★★★
ボディ★★★★★
渋み★★★★★
佐々木
「真のバルバレスコ」と評されるイタリア屈指の人気生産者がガヤ。数十の畑からブレンドして造られるワインは、産地を知り尽くしている彼だからこそ成せる業でしょう。

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(ビオンディ・サンティ)

ビオンディ・サンティは、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの生みの親とされる造り手。

イタリア最高級とも言われるこのワインは、バローロと肩を並べる存在であり、非常に長熟なワインとして知られています。

香りブルーベリー、なめし革
酸味★★★★★
ボディ★★★★★
渋み★★★★★
佐々木
ブルネッロといえばまず名が挙がる生産者がビオンディ・サンティ。力強くもしなやかなスタイルを一貫し続ける、まさにサンジョベーゼ100%ワインの頂点です。

キャンティ・クラッシコ(カステッロ・ディ・アマ)

それまで早い時期から飲める安いワインだったキャンティ・クラッシコを、熟成タイプのワインとして育てた造り手のもの。

ワインの質は非常に高く、キャンティ・クラッシコの地位を向上させたイタリアの名生産者として知られています。

香りラズベリー、スターアニス
酸味★★★★★
ボディ★★★★★
渋み★★★★★
佐々木
キャンティ地区を代表する造り手がカステッロ・ディ・アマ。高級ラインの味わい深さは言うまでもなく、5,000円前後から楽しめるのも嬉しいポイントです。

サッシカイア

SAKE People
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スーパータスカンの元祖として知られるワイン。

ボルドーのシャトー・ラフィット・ロートシルトからカベルネ・ソーヴィニヨンの苗木を手に入れて育て始め、自家用に造り始めたワインがサッシカイアの始まりです。

香りブラックチェリー、グラファイト
酸味★★★★★
ボディ★★★★★
渋み★★★★★
佐々木
「元祖スーパータスカン」としてイタリアワインを牽引しているサッシカイア。昨今は限りなくオーパス・ワンに近い味わいとして、ソムリエの間で知られています。

オルネライア

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サッシカイアに続いて、スーパータスカンの地位を不動のものとしたワイン。

ボルゲリの奇跡、とも呼ばれるワインは、濃厚でありつつエレガントな香りとスパイスを感じさせるニュアンスが特徴。

香りブラックチェリー、リコリス
酸味★★★★★
ボディ★★★★★
渋み★★★★★
佐々木
2001年、ワイン・スペクテーターの「ザ・トップ・100・ワイン」にて世界第1位を獲得したことで人気が加速。その味わいはもちろん、ボルゲリ三大ワインの一角に相応しい風格です。

ソライア

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サッシカイア、オルネライアと並んで賞されるワイン。

サッシカイアとオルネライアがボルドーブレンドなのに対し、ソライアはサンジョヴェーゼをブレンドしているのが大きな特徴。

香りブラックベリー、ヴァニラ
酸味★★★★★
ボディ★★★★★
渋み★★★★★
佐々木
イタリアの名門アンティノリが誇るフラッグシップワインがソライア。サンジョベーゼがボルドー品種と見事に混じり合い、お互いを引き立て合った至高の一品です。

イタリアのワインは奥深い

イタリアのワインは奥深い

イタリアのワインについて、歴史、品種、産地、格付け、銘柄を解説してきましたが、いかがでしたか?

イタリアのワインと言っても、まだまだ深いので、産地を深掘りしてみたり、さらに追求していきましょう。

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